VR動向
VRに関しての概説
近年VRの社会的認知度が飛躍的に高まっており、IDC(International Data Corporation)は2020年までに中国は世界最大のVR・AR市場に成長するとの予測を発表した。
同国の無数に存在するネットカフェのオーナーたちは、店舗でネットゲームを楽しむ来店客に対する新たな娯楽としてVRを提供し、爆発的な人気を呼んだ。
アメリカでは、FacebookのCEOマーク・ザッカーバーグ氏はVRを「未来のソーシャルプラットフォーム」と位置づけ、Facebookは、VR空間の中で人々が交流する将来像を描いており、米Oculus VRを買収すると発表した。
また、Googleも「Google I/O」の基調講演でVRプラットフォーム「Daydream」を発表しており、視線で機器を操作する技術を有する新興企業Eyefluenceの買収を発表した。
このように大手のIT企業もVR関連のビジネスに大きな投資をし始めていることから今後VRを用いたビジネスが流行っていくものと思われる。本記事では、VRに関する概説を行う。
そもそもVRとは何か。以下、VRに必要な概念を概説する。
- VRとは
人間の視聴覚をはじめとする五感などの感覚器を人工的に刺激して、現実とほとんど変わらない現実感をつくりだそうという研究分野のことである。
例 : マイクロソフトのテレビ画面の周囲に映像を広げるシステム「イルミルーム」
- VRの三要素
VRを定義するときには、以下の三つを満たすもの、と定義される。
- 三次元の空間性
- 実時間の相互作用性
- 自己投射性
1つ目の三次元の空間性とは、例として、3D映画のように立体的に見せようとすることが挙げられる。現代ではなじみのものとなっている。
2つ目の実時間の相互作用性とは何か。これはバーチャル空間での出来事が、ほぼリアルタイムで体感できることである。
例えばヘッドマウント・ディスプレイやCAVEでは、頭部ディスプレイの位置をセンサーが検知して、バーチャル空間の中でも頭が動き、視点が動いたように感じることができる。
最後に3つめの自己投射性とは?これは、自分がその中に入り込んでいる感覚のことをそう呼ぶ。ヘッドマウント・ディスプレイでは、視覚、聴覚、頭を動かしているという体性感覚や平衡感覚を人に感じさせられることができ、自分の行った動作があたかも、バーチャルの世界で行なっているように感じさせる。
- VRの可能性
ここで、VRの可能性の一例をあげる。例えば、航空機パイロットのトレーニングの一環であるフライト・シミュレータがあげらえる。訓練時に、オイルがもれたにおいや回路が焦げたにおいなど、緊急事態特有こにおいが出るシミュレータが用いられることがある。これにより、より現実に近い世界をトレーニングに経験しておくことで、有事に役立てる。
- VRの課題
ではVRの課題は何か?
課題としてよくあげられるのは、、いかにして主観的等価を生み出すか?である。
主観的等価 とは、 現実と等価だとその人が感じることである。
私たちが経験する物理世界は、目にするものや耳に聞こえてくるものとの視聴覚情報が一致している。また五感だけではなく、前庭感覚、深部感覚など、さまざまな感覚がある。
こうした人間の異なる感覚モダリティに矛盾なく感覚が、一致している状態が現実世界であるが、これに近づけることが現実感を向上させ、主観的等価を生み出す。
以下、VRの実用例をあげていく。
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- CAVE
イリノイ大学のトム・ディファンティらが1993年に発表した投入型多面ディスプレイ。
特徴は以下である。
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- 洞窟(CAVE)のなかにいるようなドーム型の部屋をつくり、前後左右上下の各面に三次元映像を投影することで投入感を生み出すというプロジェクター型のシステム。
- 周辺の映像がリアルタイムに再計算されて提示される。
- ヘッドマウントディスプレイと比較すると180°視野が広いこと、見回し動作をした時の映像の遅れが少なく「VR酔い」と呼ばれる不快感が少ない。
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- ヘッドマウント・ディスプレイ
頭部に装着するディスプレイ装置のことである。
視覚、聴覚、頭を動かしているという体性感覚や平衡感覚は再現できる。
物理世界のような手で触った触覚、草木のにおいなど嗅覚、味覚といった点においてまだ物理世界で感じるものと主観的等価に至るまではいたっていない。
最後にまとめとして、現在提案されているのは以下の三種類のVRをあげる。
- コンピュータなどによってつくりだされた人工的なサイバースペースの提示。
人工現実感と呼ばれていた。 - テレイグジスタンス、テレプレゼンス
- 遠隔地にあるものでも現実世界と同じ現実感を提示することなどを指す「遠隔存在感」を意味する。
- 代替現実(SR)
- コンピュータがつくりだした世界と実世界の二つを、積極的に重ねるシステム
- AR(拡張現実感)
- MR(複合現実感)
実世界からある物体を視覚的に除去する「陰消現実感(DR)」と呼ばれるシステム
→光学迷彩はその一種
今回は、VRの概要に関しての説明をおこなった。
今後、どのようなビジネスとなっていくか、とても期待を持てるとともに、自分でもビジネスモデルの提案をしていきたい。
参考著書 :
- エンタメだけじゃない!VR・AR・MR ビジネス最前線、EY アドバイザリー・アンド・コンサルティング、日経BP社
- スーパーヒューマン誕生!人間はSFを超える、稲見昌彦、NHK出版新書