機械学習、ディープラーニングとは何者なのか?

前回は、なぜ今AIがブームとなっているのかを、AIの歴史から追ってみました。
では、現在のAIブームで主流となっている「機械学習」や「ディープラーニング」とはいったい何者なのでしょうか?


1950年代にAI(人工知能)が生まれ、当時はニューラルネットワークといった技術が流行りました。
ニューラルネットワークは著者が大学時代(2000年代前半)にも情報系の授業で取り上げられていました。
近年では機械学習やディープラーニング(深層学習)といった手法が主流になっています。
このディープラーニングですが、機械学習というものの一部であり、その機械学習もまたAIの一部と、広義でいうとみんなAIなのです。
なぜ今、機械学習やディープラーニングが主流になっているのかといいますと、理由の一つにGPUの発達が挙げられます。
GPUとは、Graphics Processing Unit の略で、別名ビデオカードやグラフィックカードとも呼ばれます。
ビデオカードは私たちが普段使用しているパソコンにも搭載されていて(最近はCPUと一体化されているものも多いです)、パソコンゲームやプレイステーションなどのゲーム機が綺麗な映像を表現するために使われ、進歩してきました。
GPUは、家電量販店やAmazonなどで売られていて、値段も手頃な割に高速な並列計算が実現できるのが売りです。当初は映像(3次元コンピュータグラフィックス)の計算に特化した処理を行っていましたが、せっかくの並列計算ユニットを映像以外にも使えないかと思った技術者が、映像以外にも使用できるための試みを行いました。
そして、GPUをAIに使うことによって、2015年頃を境にAIは急速な成長を遂げます。AIの中でも特にディープラーニングに用いられたことによる影響が大きいのです。

機械学習の中からディープラーニングが登場しましたが、機械学習とディープラーニングはそれぞれどんな特徴があるのでしょうか? 明確に分けるにはまだまだ議論の余地があるようですが、敢えて分類するとしたら、「問題解決のための正誤の材料を人間が与える必要があるかないか」という解釈の仕方が一つあって、前者が機械学習、後者がディープラーニングに当たります。

機械学習

    • 大量のデータを決めた手法に沿って処理するのではなく、手法そのものをAIに学習させる。

ただし正解となる判断基準は人間が示す必要がある。

  • コンピュータビジョン(画像処理)ぐらいしか使い道がないと言われている。
  • 例えば、車の自動運転のシステムは機械学習が主流。
  • 車の自動運転では、カメラの画像前方車両、白線、標識、人物などを検出する。
  • ただし、画像からエッジを検出する、エッジから人や車と認識させるなど、プログラムを組む手間がかなりかかる。
  • また、エッジ検出といった画像処理のエラーや、霧といった天候などの不確定要素に対するエラーの対処も必要。

ディープラーニング

    • AIの黎明期から存在するニューラルネットワークの発展型。
    • ニューラルネットワークのニューロン(入出力と処理のセット)を増やし、さらにニューロンを何層にもわたって計算させる。
    • ニューロンとは、「複数の入力を受け取って、ある一定以上の値になると出力が行われる(発火する)」というもので、この形は「形式ニューロン」と呼ばれる。形式ニューロンを応用させたものをパーセプトロンという。
    • パーセプトロンは、異なる種類の情報を入力とし、それぞれの入力に対して重み(=意思決定モデル)をつけて答えを出す。出した答えはエラーを含むため、さらに学習させてトレーニングを行う(=何層にもわたって計算させる)。
    • この計算は膨大なため、GPUを使って並列に行わせることができるようになって、一躍有名になった。
    • パーセプトロンを使った車の前方認識を例にとると、
      まず、入力の重みを、「画像が一時停止標識である確率が86%」、「制限速度標識である確率が7%」、「木に引っ掛かった凧である可能性が5%」とする。

これに対する解を求め、次の層の入力とし、また新たな重みづけをして学習させる。エラーがあれば再度学習させる。
すると、入力に対する重みが最適化され、霧の有無といったといった天候にかかわらず、ほぼ毎回正しい答えを出せるようになる。ここに至るまでに何十万枚、あるいは何百万枚もの画像(車からみた前方のシーン)を読み込む必要がある。

  • 車以外の例で、猫を認識させるとするなら、Facebook上にある膨大な数の猫を集めて学習させると、人間のように猫と認識できる(googleが2012年に実験、検証済み)。

ニューラルネットワークやパープトロンに関しては、それだけで専門書が膨大に存在するほどで、世界中の研究者の方々の努力の結晶が感じ取れるものです。
インターネットの資料のほかに、近くの図書館や書店でも容易に手に入れることができるでしょう。

次回に続きます。

参考

    • なぜ今回のAIブームは本物と言えるのか?

http://w73t.com/ai1/

    • NVIDIA

https://blogs.nvidia.co.jp/2016/08/09/whats-difference-artificial-intelligence-machine-learning-deep-learning-ai/

    • ニューラルネットワークとパーセプトロン

http://nnadl-ja.github.io/nnadl_site_ja/chap1.html