コンピュータ将棋の進化でプロ棋士は不要になるのか?
■コンピュータ将棋の進化
第30期竜王戦7番勝負 第5局
先手の羽生棋聖が87手で勝利し、4勝1敗で竜王のタイトルを獲得した。
これにより竜王獲得数が通算で7期になり永世竜王を獲得し、他6つの永世称号と合わせ永世7冠を達成した。
藤井聡太4段の29連勝や羽生善治2冠の永生7冠など、最近巷を賑わせている将棋界。
今ではニコニコ生放送やabemaTVなどで将棋の生中継が気軽に見れて、タイトル戦になると十数万人が見るほどの人気となっている
明るい話題ばかりの将棋界だが、前回の第29期竜王戦の挑戦者決定戦が行われているころ
に、ある事件が起きる。
棋士の将棋ソフト不正疑惑である。
その件に関してここでは詳しく触れないが、事の発端は棋士の指し手が将棋ソフトと90%以上一致していた、である
この一件後、対局中のスマホ持ち込み禁止と外出を禁止する規定が設けられ、将棋ソフトを利用した不正を防止するようになった。
しかし、なぜ今までこのような規定がなかったのか?
それはプロ棋士が自分より弱いコンピュータの指し手を見ても、カンニング行為にはなりえなかったからである
この規定ができたのは2016年で、直近の数年間で将棋ソフトは爆発的な進化をとげげ、人間を凌駕するまでになったのだ。
■将棋電王トーナメント
将棋ソフト同士が対戦し、今一番強いソフトを決める大会「将棋電王トーナメント」
2017年で第5回目の開催となるこの大会は、まるで人間同士が指しているように対戦サーバーを介してコンピュータ同士が対戦し、勝者を決める。
持ち時間は1時間切れ負けで、優勝賞金300万円!
第5回覇者は「平成将棋合戦ぽんぽこ」である。
準決勝で王者PONANZAを破り決勝ではshotgunに勝利した「平成将棋合戦ぽんぽこ」は、将棋ソフト「やねうら王」から派生したコンピュータ将棋ソフトであり、強化学習の手法には「雑巾絞り」が採用されている。
「雑巾絞り」とは、第26回コンピュータ将棋選手権ごろから第4回電王トーナメントにかけてコンピュータ将棋開発者の間で爆発的に流行した学習法で、短手数しか読まないコンピュータを短時間で対戦させ、その棋譜をそれより強いコンピュータ(数手深く読める)に修正させる
それを繰り返すことで評価値を上げ、学習させている。
1局にかかる時間は1秒未満、強化学習を利用した学習方法にはプロ棋士といえど太刀打ちができないのである。
■将棋ソフトの利用
将棋界の若手棋士の中には、将棋ソフトを利用し局面を研究する者も少なくない。
ソフトの導入により、これまで信じられてきた定跡、常識が次々に打ち破られている。
ニコニコ動画やabemaTVの将棋中継では、プロの棋士による解説に加え、将棋ソフトの評価値(今どちらがどれだけ優勢かを数値化したもの)や指し手予想が見れ、今までとは違った楽しみ方が生まれている。
知識や経験がないと理解しづらかった将棋の世界も、将棋ソフトの評価値を見るだけでどちらが有利なのか、この手が好手か悪手か、詰みがあるのかなど気軽に見れるようになった
人間を超える力をもったソフトが世に出ることで、棋士の存在価値が薄くなるどころか、現在将棋界はかつてないほど世間を賑わせているといっても過言ではない。
将棋ソフトを含め、機械学習やディープラーニングを利用した方法は様々な分野で活躍している。
今の将棋界のように、新たな技術とうまく補完しあい、長所を生かしあう関係性を築くことができれば、これまでなかった文化、イノベーションが生まれるのかもしれない。