202X年の流行ファッションは「着るセンサー」!?

みなさん、スマートテキスタイルという言葉をご存知でしょうか?
次世代の素材と訳されるこの要素技術は、服飾分野とエレクトロニクス分野の融合としてウェアラブルデバイスなどでの活用が期待されています。
日本では、スマート素材スマート繊維といわれることもあります。

今回は、このスマートテキスタイルについて紹介していきます。


スマートテキスタイルとは?

「スマートテキスタイル」は、次世代の素材・繊維と表現される技術で、服飾分野とエレクトロニクスなどの分野の融合によるものとして最近注目されているキーワードです。

テキスタイル(textile)という言葉自体は、一般的には繊維・織物・布地と訳され、服飾やインテリアの分野でよく使われています。

齋藤和紀氏の著書「エクスポネンシャル思考」でも、今後加速度的に発展が期待される技術(エクスポネンシャルテクノロジー)として紹介されています。
※上記書籍ではスマート繊維・スマート素材と訳されていますが、本記事ではスマートテキスタイルと表記します

特にエレクトロニクス分野での活用事例は「e-テキスタイル」とも呼ばれ、着るセンサーなどの新たな形のウェアラブルデバイス実現に寄与しています。
従来型のウェアラブルデバイスは、時計やスマートフォンにセンサーを内蔵していることが一般的でしたが、これからは着るウェアラブルデバイスの時代が来るかもしれません。

服飾 x エレクトロニクス「e-テキスタイル」

e-テキスタイルはスマートテキスタイルの一種で、導電性の高い素材や電線などを織り込んだ特殊な繊維で衣服を作成する技術です。

特殊な繊維を使って編み上げた服と聞くと、個人的には「喋る学生服を着た女の子が刃物を持って闘う」という、とても胸が熱くなるアニメを思い出します。笑

スマートテキスタイルやe-テキスタイル技術を備えた衣服は、アニメのように日本語を話すことはありませんが、服の繊維や素材がセンサーのように働き、着ている人の心拍数や血圧といった生体データを収集できます。

生体データの他にも、生地自体の曲げやねじりを感知できる素材や、人のリラックス度合いを推測する素材もあります。

スマートテキスタイルの実例

ここまで紹介してきたスマートテキスタイルの実例として、いくつかの企業の取り組みをご紹介します。

hitoe®

「hitoe®」はNTTと東レが共同開発した機能素材で、スポーツや安全管理、医療などの分野で活用が検討されています。

「hitoe®」には、NTT研究所の繊維に電気を通す「繊維導電化技術(繊維素材に導電性をもたせた技術)」と東レの「ナノファイバ技術」や「生体信号計測縫製技術(人体が発する情報を計測できる素材を縫製する技術)」が利用されており、2社の協業によって実現された事例といえます。

着るだけで心拍数など人体が発している情報を測定できるこの素材は、様々な用途が考えられ、医療機関におけるリハビリテーション分野での実証実験などが行われています。

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また、飛行機に乗った赤ちゃんの心拍数などを「hitoe®」でリアルタイムに測定し、飛行機の離着陸時の耳抜きを適切なタイミングで行う、といった実証実験も行われています。

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着るだけで生体情報を測定できるというのは、大人から子供まで誰でも簡単に利用できるため、今後も様々な活用事例が出てくることが期待されますね。

圧電ファブリック

「圧電ファブリック」は、帝人と関西大学が共同開発した素材で、曲げることで電荷・電圧が発生するポリ乳酸繊維と電極の役割を担う炭素繊維によって素材の曲げやねじりを検出できます。

これらの素材を組み合わせ、センシング機能を持った刺繍模様として衣服に編みこむことで、これまでにはないファッション性も兼ね備えたウェアラブルセンサーを実現できるとしています。

本技術はIoT分野での活用も期待されており、オシャレと技術を兼ね備えられるというのは嬉しいですね。

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衣料型ウェアラブルシステム

「衣料型ウェアラブルシステム」は、グンゼがNECの技術協力によって開発したもので、着るだけで姿勢や消費カロリー、心拍などの生体情報を計測できる衣料型のウェアラブルシステムです。

このシステムは、導電性の繊維をグンゼの技術で加工し、姿勢を把握するセンサーや配線として活用しています。肌着メーカーであるグンゼの強みを生かすことで、身体へのフィット感や伸縮性・通気性にも優れた製品になっているとのことです。

また、センシングデバイスでありながら、洗濯することも可能で清潔な状態で着用できるというのも驚きです。

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NASAによる宇宙服におけるスマートテキスタイルの開発

最先端の技術が多く応用されている宇宙飛行士の衣服にもスマートテキスタイルが活用されています。
宇宙空間や火星での着用を想定した宇宙服の開発には、難燃性や丈夫さ、それでいて長期間の作業の支障にならない軽量性や着心地などを確保するといった課題が多くあります。

こちらの事例もNASA単体ではなく、複数の繊維業界の企業が協力して開発を行っているようです。

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宇宙服についての詳しい事例は、2018年9月9日に開催予定の「宇宙旅行に何着ていく?」宇宙旅行と宇宙服トークショーでもご紹介する予定ですので、ぜひご参加いただければと思います。

まとめ

いかがでしたか?
今回はファッションとテクノロジーの融合、スマートテキスタイルについてご紹介してきました。

センシングデバイスやウェアラブルデバイスというと、どちらかというと男性的なイメージが強いですが、これからの時代は男女問わずオシャレなファッションとウェアラブルデバイスの両面を兼ね備えたソリューションやサービスが出てくるのではないでしょうか。

また、今回ご紹介した事例は、服飾分野とエレクトロニクス分野それぞれの専門企業が各社の強みを生かして共同開発を行う事例が多く、技術発展と同時にSDGs(持続可能な開発目標)の目標17「パートナーシップで目標を達成しよう」に寄与できる事例も多いように感じます。

私たち未来技術推進協会も、大学や企業と技術者をつなぎ、社会課題の解決を目指していきます。

以上、平野でした。

参考