イノベーションの鍵はビジネスエコシステム?その②

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イノベーションの鍵はビジネスエコシステム?その②

みなさん、こんにちは。鈴木彩です。

前回は「ビジネスエコシステム」の概要について説明しました。
(イノベーションの鍵はビジネスエコシステム?その①)
ビジネスエコシステムとは、企業間の相互依存関係を生物学の生態系になぞらえたものであり、イノベーションの鍵になると考えられます。
今回は、ビジネスエコシステムにおける企業の役割として定義されているハブ企業とニッチ企業の戦略について触れていきます。


なお、本記事ではハブ企業、ニッチ企業を以下のように定義しています。

ハブ企業
 プラットフォームを提供する企業
ニッチ企業
 ハブ企業のプラットフォームをインフラとして利用して価値を創造する企業

ビジネスエコシステムの戦略

ビジネスエコシステムを繁栄させるにはハブ企業とニッチ企業それぞれの戦略が必要です。
どんな戦略が考えられるのか、それぞれ見ていきましょう。

ハブ企業の戦略

ハブ企業はプラットフォームを構築し提供する役割を担い、そのプラットフォームはビジネスエコシステムの核となるので、ハブ企業の振る舞い次第でニッチ企業の命運が左右されると言っても過言ではありません。
ハブ企業が持っておくべき重要な視点は以下の2つです。

①自社の担当範囲について
②他社との関係性について

もう少し具体的に見ていきましょう。

①自社の担当範囲について
ハブ企業はビジネスエコシステム内で、ニッチ企業の支援だけをするのか、自社もニッチ企業のように直接製品・サービスを提供するのかを判断する必要があります。

例えば、Apple社は、iTunesやiPhoneなどのプラットホームを構築していますが、コンテンツである音楽や映画の制作は行っていません。
一方で、大型ECサイトのAmazon.com,Incではプラットフォームの提供だけではなく自社製品の提供も行っています。

ハブ企業がニッチ企業と同様にプラットフォーム内で製品・サービスを提供することも可能です。自社のプラットフォーム内で行うので収益の一部を支払う必要なく、プラットフォームの特性を十分理解しているため効率よく製品・サービスを提供することができます。

ニッチ企業に比べて低コストで効果的にプラットフォームを活用できるので、ビジネスエコシステムの立ち上げの際にはハブ企業がニッチ企業としての活動を行うことで他のニッチ企業に対し方向性や特徴を示す事ができます。

ただし、あまりハブ企業が参入しすぎると、ニッチ企業がビジネスエコシステムに参入する必要性がなくなるので、ビジネスエコシステムの規模や成長に応じてハブ企業の担当範囲を調節すると良いでしょう。

②他社との関係性について
ハブ企業はニッチ企業の価値の占有性をどのようにするか、関わりを決める必要があります。
製品・サービスの価値に重点を置くのであれば、ニッチ企業との取引を占有するクローズドな関係構築が望ましい一方、新たな価値の創造に重点を置くのであれば、取引を占有しないオープンな関係構築をする必要があります。

どの関係構築もビジネスエコシステムには必要ですが、いずれかに偏るのは健全なビジネスエコシステム構築には効果的ではありません。バランスのよい関わりが必要になります。

では、次にニッチ企業の戦略について見ていきましょう。

ニッチ企業の戦略

ニッチ企業は1つ1つの企業の影響力はハブ企業ほどではありませんが、ビジネスエコシステムへの貢献には大きく関与しています。

ニッチ企業戦略はハブ企業への依存度によって、大きく分けて4つのタイプが存在します。
用語は『オープン化戦略 境界を超えるイノベーション』を引用しました。

①新規挑戦型
②安定関係構築型
③戦略機会追求型
④開発資産活用型

これだけではなんのことがさっぱりですね。ビジネスエコシステムへの貢献として、健全性の指標(「生産性」、「堅牢性」、「ニッチ創出(革新性)」)
(参考:Strategy as Ecology)
と併せて1つずつ紹介します。

①新規挑戦型
1社のハブ企業との取引しかしない企業がこちらです。
複数のプラットフォームに参加する程の資源(ここでは製品・サービスのこと)を有していない企業や新規参入する企業は主にこの戦略を取ることが多くあります。
資源が少ないからこそ、単一のプラットフォームに最適化し、革新的な製品を生み出すほうが収益を得られる可能性が高くなるため、ビジネスエコシステムの「ニッチ創出」に大きく寄与します。

②安定関係構築型
②~④は複数のハブ企業と取引する場合の戦略になります。
こちらは、複数の企業と取引をしながらも主要な取引先を1社に固定するので、主要なハブ企業との信頼関係を構築し、開発に関わるコストや取引に関わるコストを減らすことが出来ます。
ハブ企業の覇権交代がない限り、ビジネスエコシステムの「堅牢性」に大きく寄与します。

③戦略機会追求型
こちらはハブ企業の覇権交代に応じて主要な取引先を変える戦略です。覇権を握っているハブ企業との関わりを強く持つので、大きな収益になる可能性は十分ありつつも、顧客に受け入れられなかった際は大きな損失を被る可能性もあります。このようにハイリスク・ハイリターンの戦略を取るこちらのニッチ企業は、ビジネスエコシステムの「生産性」に寄与します。

④開発資源活用型
③の企業とは反対に、自社の資源(製品・サービス)を活用して、リスクを抑えつつつ相応のリターンを得る戦略がこちらです。
取引相手のハブ企業を分散させてバランスをとるので、開発に関するコストや取引に関するコストはかかるものの、ハブ企業の状況に左右されずに収益を得ることができます。
この戦略を取るニッチ企業はビジネスエコシステムの「堅牢性」・「生産性」に寄与します。

表.ニッチ企業のタイプとエコシステムへの貢献

これらの戦略はニッチ企業のもつ資源や費用、経営戦略に応じて選択するのが良いでしょう。
ハブ企業もまた、4つのタイプのニッチ企業とバランスよく関係構築することで、よりビジネスエコシステムは繁栄に近づきます。

まとめ

いかがでしたでしょうか。
今回説明した戦略以外にもビジネスエコシステムを繁栄するための戦略は数多くあります。

重要なのはそれぞれの企業の利益のみを追求するのではなく、ビジネスエコシステム全体の利益を見て製品・サービスを提供することです。全体の利を取ることが、ひいては自社の利益に繋がります。

また、企業同士が相互依存関係を構築するので、1社のみでは成し得なかったイノベーションを実現させることも可能になります。
わたしたち、未来技術推進協会もアイデアソンやハッカソン、講演会を通じて産学官民のハブになり、エコシステムを構築して日本の技術発展に貢献するよう邁進して参ります。

以上、鈴木彩でした。

参考

参考書籍