生き残りをかける「SDGs×ソーシャルビジネス」の可能性
こんにちは、Vona(ボーナ)です。
国連が国際社会の持続可能な発展のために必要な目標Sustainable Development Goals(SDGs)を策定したのがきっかけとなり、日本企業の間で、社会課題をビジネスの力で解決する「ソーシャルビジネス」を事業として取り組む企業が増えてきています。
これまでの自社の利益だけを優先する時代から、社会の課題に向き合った企業活動を考えることが、国際社会で生き残っていくために必要であるという認識が広まりつつあるからです。今回はそんなソーシャルビジネスを軌道に乗せるにはどんな視点が必要なのか。「SDGs×ソーシャルビジネス」をテーマに事例を紹介します。
SDGsについて
SDGsは、国連によって2015年に国際社会が持続可能な発展のために2030年までに達成すべき目標として採択されました。達成すべき17の目標とそれを具体化した169のターゲットで構成されています。(参考記事:SDGsの17目標と169のターゲット)
SDGsの前身として国連が掲げていた「ミレニアム開発目標(MDGs)」では、貧困など途上国の課題解決が主な目的でした。それに対してSDGsは、新興国だけではなく、先進国も含めたあらゆる国と地域の目標達成をうたっており、国連が全世界に求めた企業活動の新しい「グローバル基準」とも捉えることができます。
取組み事例①~意識改革からはじまるソーシャルビジネス~
ソーシャルビジネスを立ち上げるに際して、「お困りごとにはビジネスチャンスがあり、新規市場を切り開く」という意識を、経営層はもちろん、社員一人一人持つことが大切になります。こうした意識改革は着実に広がっており、経営理念や経営計画の中にSDGsの目標を取り入れる企業も出てきています。
例えば、オムロン株式会社が取り組んでいるのが経営層の意識改革です。同社の立石文雄会長が企業理念である「事業を通じて社会課題を解決し、よりよい社会をつくる」ことがSDGsにも通じると、世界の拠点を回り各地の経営幹部と企業理念について対話をしました。2016年度に、マレーシア、インド、中国など計10拠点で対話を実施しています。
また一般社員にも企業理念を日常業務で実践してもらうことを目的に、2012年度から社内表彰制度も取り入れています。この制度から都市部で効率良く品質の良い食物を栽培し、食料問題の解決に貢献するプロジェクトなど、様々なアイデアが生まれています。
SDGsの17の目標と、目標に紐づく169のターゲットが自社にどう関与し、利益を上げながら持続的成長につなげられるのか、を整理することが事業創出の第一歩となります。
取組み事例②~ダウンストリーム型からアップストリーム型へ~
これまで企業が展開してきたソーシャルマーケティングは、社会的課題を念頭に置いているとは言え、消費者に自社がどんな新たな付加価値を提供できるかを主目的にしたダウンストリーム(川下)型が中心でした。これはマーケティングの目的として売上や利益をより重視した考え方です。
一方で、アップストリーム(川上)型のソーシャルマーケティングとは、公共の利益など社会構造にも影響を与えることをより重視した考え方です。そのアップストリーム(川上)型のソーシャルマーケティングの発想から生まれた成功例の一つとして、ヤマトホールディングスでは全国で免許を返上した高齢者を対象に自治体と協力して「買い物支援サービス」と「高齢者見守りサービス」を北は北海道から南は九州まで全国各地域で実施しています。これは配達中に顧客である老人の孤独死に出会ったセールスドライバーが、「孤独死の高齢者を一人でもなくしたい」との思いから発案され実現した新たなサービスです。このサービスによって一人暮らしの高齢者の生活の手助けだけでなく、人との繋がりをもつ安心感もあると利用者の方からの生の声もあります。この取組みは、目標11「包摂的で安全かつ強靱(レジリエント)で持続可能な都市及び人間居住を実現する」に貢献できるソーシャルビジネスの一例と言えます。
ソーシャルビジネスの投資評価~ESG投資~
社会的課題に取り組んでいることを訴えるソーシャルマーケティングの手法には「社員がどの程度ボランティア活動に貢献しているか」「専門分野の社員が公的機関などにどの程度人的支援(プロボノ)しているか」といった指標があります。これらの成果指標は売上や利益などの財務指標とは違って、短期的に成果を評価しにくいものになっています。
そんな中、投資家などからソーシャルビジネスが利益にどう結びついているのか分かり辛いという声もあり、株式市場では最近、企業の社会分野などへの取り組みを評価するESG(環境・社会・ガバナンス)投資が広がっています。財務諸表には表れませんが、企業が成長を続けるために重視すべきだとされる要素を示し、世界の投資家が注目し始めています。(参考記事:これからの投資はこれだ!世界1,500機関以上が選ぶESG投資)
株価の評価や金融動向を分析するアナリストも企業の業績や財務の分析だけでなく、社会問題への取り組みを含めた事業評価を取り入れる傾向にあります。
ESGをより大切にしようというのが社会全体の流れで、ソーシャルビジネスもその一つです。収益を上げようとする企業ではなかなか埋められない課題を埋めていくのがソーシャルビジネスですが、ボランティアのように資金的、人的リソースの継続的な確保が難しいため、ビジネスという継続する形にするのがポイントとなりそうです。
今回は「SDGs×ソーシャルビジネス」をテーマに取り組み事例を紹介しましたが、少子高齢化や年金問題、地方の人口減少などを抱える日本は世界の中でも課題が多い先進国といえます。だからこそ、その課題をビジネスの力を使って解決するソーシャルビジネスのモデルを他国に先駆けて確立することで、日本の国際社会でのプレゼンスを高めるチャンスだと捉えることもできます。
私たち未来技術推進協会もそのようなソーシャルビジネスを生み出すきっかけ作りとして、有識者の講演会やアイデアソン、当協会にて開発したオリジナルSDGsゲーム会などを行うMeetupなどのイベント開催を通して貢献していきます。