二足歩行ロボットができるまで(1)

こんにちは、遠野駆です。
皆さん二足歩行ロボット「Atlas(アトラス)」ってご存知でしょうか?(参考記事
ジョギングしているのをみると技術の進歩には驚くばかりです。以前の記事でもロボットの進歩について紹介しましたが、そんなロボットに関する基礎的な内容から二足歩行の実現までを数回に渡り紹介します。

今回は、基礎知識として機械として動く部分を指すロボットマニピュレータ、エネルギーを機械部分へ変換する駆動部分を指すアクチュエータについて見ていきしょう。


ロボット工学の基礎知識

ソフトバンクのPepperやiRobot社のルンバなど、身近にロボットを見るのは当たり前になりましたが、どうやって動いているかご存知でしょうか?

基本的な構成要素

ロボット技術と言うと、先に挙げたルンバや産業用ロボット、広くは無人偵察機など様々なものが社会で活躍しています。
今回の記事では、以下のうちロボットマニピュレータとアクチュエータについてご紹介します。

  1. ロボットマニピュレータ
  2. アクチュエータ
  3. センサ

1.ロボットマニピュレータ
マニピュレータとは、クレーン車やUFOキャッチャーのアームのように、実際に動く機械の部分を指します。例えば、ヒューマノイドロボットは、胴体に腕2本、脚(足)2本の合計4本のマニピュレータが接続したものと考えることができます。

ロボットマニピュレータは次のような構成に分解でき、これらを希望する位置や角度に動かすことを制御(コントロール)といいます。

  • エンドエフェクタ(手先効果器):モノを運んだり並べたり、何かを作業する部分です
  • リンク(Link)   :クレーンでいう棒状の部分で、繋がりや繋ぎ留めるものいいます
  • 関節(ジョイント) :人間でいう関節に相当する部分です
  • ベース部(土台)  :ヒューマノイドロボットの腕に対して、肩に相当する部分です。動作の支点となります。

<簡易図>

2.アクチュエータ
アクチュエータ(Actuator)とは、エネルギーを機械運動へ変換する機械要素であり、駆動部分やそれを含む駆動機構全体を指します。ロボットマニピュレータを駆動させるには、角度や距離、力、温度など物理量を計測するセンサとアクチュエータが必要で、センサから得られた情報をアクチュエータにいかに反映させるかが、制御のポイントです。

一般的によく用いられるアクチュエータとして、以下3つを紹介します。

電磁駆動アクチュエータ

電磁気力で駆動するアクチュエータの総称です。
駆動原理によって名称が異なり、今回はロボットマニピュレータで使用頻度の高い直流モータ(※)を例にご紹介します。磁石の間にコイルを置き、電流を流すことで生じるローレンツ力によってコイルを回転させます。

取り扱いが容易なため直流モータの技術は古くから用いられて来ました。一方、大きなトルク(回転軸を中心にはたらく力のモーメント)を取り出すことが難しく減速機(ギア、歯車)と組み合わせて使う必要があるため、回転スピードが低下したり、大型化や摩擦の増加を招くデメリットがあります。

※直流モータを含み、電磁駆動としては以下のものが挙げられます。

  • 回転モータ(上記ように回転運動を行う)
  •  1.直流モータ(DCモータ)
     2.同期モータ(シンクロナスモータ)
     3.ブラシレスDCサーボモータ
     4.誘導モータ(インダクションモータ)
     5.ステッピングモータ(パルスモータ)
     6.ダイレクトドライブ(用高トルク)モータ

  • リニアモータ:軸を持たず、基本的に直流運動をするものを総称

空気圧駆動アクチュエータ

空気の圧縮・膨張する力で駆動するアクチュエータの総称です。
駆動に用いる圧縮空気はロボットの外部で稼働する圧縮機によって生成されます。
電気モータに比べ駆動時の衝撃に対する安全性が高いため、コンパクトな駆動機構と安全性を必要とするアンドロイドにとって電気モータよりも適しているといえます。

一方で、空気圧アクチュエータはエネルギーを組み合わせた際に単純に総和で考えられないため、制御が困難であるというデメリットがあります。

油圧駆動アクチュエータ

コンクリートを扱う現場など、強い力で押し付けながら大きく振動がかかる作業においては、電気モータは減速機が壊れてしまうため、一般的には使えません。

また、空気はあまり大きな圧力をかけられないのに対して、油を使うことにより50気圧相当の圧力をかけることで大きな力を出せます。油漏れや騒音のほか、油の温度変化でアクチュエータの速度が変わるなどのデメリットがあります。

以下で、ドリルでコンクリートを粉砕する事例が紹介されています。
https://pc.watch.impress.co.jp/docs/news/1040968.html

まとめ

今回は、マニピュレータとアクチュエータに触れましたが、次回はセンサおよび二足歩行ロボットの実現に向けた学術分野などに触れていきます。
華やかな発表やイノベーションに注目されますが、様々な研究や基礎知識をベースとした並々ならぬ研究の成果の積み重ねで成り立っていることを知り、深く感銘しました。

弊協会では、大学・企業・各種機関と連携して、技術革新を推進する活動を続けていきます。著名人を招いた講演会やアイデアソンなど各種企画しているので、ぜひご参加ください。

※実掲載日以降のイベント数件

以上、遠野駆でした。


参考