SDGs達成の鍵は宇宙にあり!JAXAの取り組み事例
みなさん、こんにちは。鈴木彩です。
宇宙もSDG達成に貢献していることはご存知でしたか?
私たち、未来技術推進協会では9月9日にファッションショーという観点から宇宙について触れられるイベントを開催しました。
当イベントの登壇者である民間宇宙飛行士の山崎大地氏のインタビューの中で「宇宙はいろんな社会課題を解決できる」と仰っています。
たとえば、国際宇宙ステーション「きぼう」日本実験棟では高品質なタンパク質結晶化実験や宇宙医学の研究を行っています。
今回は、多くの医薬品の開発や病気の理解の礎となるタンパク質結晶化について触れています。
JAXAのSDGsへの取り組み
JAXAは国際宇宙ステーション「きぼう」日本実験棟で、無重力を利用した実験を行っています。
SDGsの目標3「すべての人に健康と福祉を」と目標9「産業と技術革新の基盤を作ろう」に関連して、高品質のタンパク質生成実験や、健康管理や体調維持のための医学研究などに取り組んでいます。
高品質タンパク質結晶生成実験
JAXAでは微小重力環境を活用してタンパク質の結晶化の研究を行っています。
タンパク質は私たちの皮膚や臓器、免疫システム、DNAの合成など多くの生命活動に必須な物質です。
タンパク質の構造を理解することは生命の構造を理解することに繋がります。それだけではなく、創薬の面においても、タンパク質の構造がわかれば感染症やがん、生活習慣病などの医薬品の研究も進みます。
薬は、その分子が生体のタンパク質の構造にはまり、働き方を変えることで病気を治します。
そのため、医薬品開発においてもタンパク質の構造を理解することは重要なことなのです。
では、なぜ無重力下でタンパク質の結晶化を行うのでしょうか?
タンパク質の構造解析を行うには「結晶化」という操作が必要になります。結晶とは、個体のうち分子や原子が規則正しく並んでいるものの状態を指します。
この結晶が高品質であるほど分子の構造がはっきりとわかるようになりますが、今までは結晶化を行うのに数年~数10年もの日数を費やしていました。
その原因は重力です。
重力がある状態で結晶化を行うと、温度や濃度、表面張力などの影響で「対流」が発生するので、結晶内の分子配列が乱れ、品質が低下し、構造解析が正確に行うことが出来なくなります。
※対流
空気や水のような流体に沿って、重力とは逆方向に浮力が発生することで、熱エネルギーや物質が運ばれる現象です。
詳しくはこちらを参照ください(生命のしくみを解明する鍵 タンパク質)
ところが、宇宙では重力がないので、浮力が発生せず対流は発生しません。そのため、
高品質なタンパク質の結晶を作り出す事ができるとされています。(「タンパク質結晶生成宇宙実験」より引用)
JAXAでは年に2回大学や研究機関、企業から実験対象となるタンパク質を募集し、研究テーマを定めて国際宇宙ステーション「きぼう」日本実験棟に打ち上げて実験を行っています。
今までに宇宙で結晶化の実験を行ったタンパク質はなんと1000種類以上。
高品質なタンパク質の結晶を生成し、その構造を理解することで、感染症やがんはもちろん、生活習慣病などをターゲットとした医薬品の開発が飛躍的に進歩する可能性があります。
まとめ
これまで、タンパク質の構造解析にかかっていた多くの時間を、宇宙の無重力を活用して時間を短縮することできれば、その後の病態の研究や医薬品の開発が飛躍的に進歩する可能性があります。
様々な技術で宇宙という空間を活用することはSDGsの目標9「産業と技術革新の基盤を作ろう」の達成に大きく貢献でき、宇宙を活用したタンパク質の研究が進むことで、SDGsの目標3「すべての人に健康と福祉を」の達成にも貢献できると思われます。
未来技術推進協会でも様々な分野の方と協力して、技術でよりよい社会を作るため、宇宙利用も推進していければと考えています。