6年ぶりの見直し!SDGsを取り入れた第5次環境基本計画とは(後篇)

こんにちは、Vona(ボーナ)です。
今回も引き続き、6年ぶりに見直され、これまで環境保全が中心だった計画とは異なり、経済や社会が抱える課題解決も目指しSDGs(持続可能な開発目標)の内容も盛り込まれた「第5次環境基本計画」について紹介します。
前回記事では、第5次環境基本計画の概要と6つの重点戦略について紹介しました。
今回は、この6つの重点戦略に記述されている「SDGs」や「最新の科学技術」を取り入れた、社会課題を解決する具体的な戦略について紹介します。


6つの重点戦略の概要

重点戦略① 持続可能な生産と消費を実現するグリーンな経済システムの構築

戦略①では、以下3つの視点と具体的な施策からグリーンな経済システム構築を目指しています。

企業戦略における環境ビジネスの拡大・環境配慮の主流化
製品の販売からサービス(機能)の販売へ転換するサービサイジング、製品・サービスを多くの人と共有するシェアリングエコノミーなどの促進による新たなビジネス形態の導入によるCO2排出の削減(低炭素化)、省資源への貢献の見える化を推進
国内資源の最大限の活用による国際収支の改善・産業競争力の強化
「資源の活用」では、太陽光や水力・風力発電などの再生可能エネルギーの活用、水素利用によるCO2フリー技術の拡大などを推進
金融を通じたグリーンな経済システムの構築
ESG投資(参考記事)の普及、グリーンボンド(環境問題に効果のあるグリーンプロジェクトに限定した債権)発行や投資の支援などを推進

今後浸透しつつあるシェアリングエコノミーや、再生可能エネルギーの活用、ESG投資をどう取り入れ活用していくかがKeyとなりそうです。

重点戦略② 国土のストックとしての価値の向上

戦略②では、以下3つの視点から国土価値の向上を目指しています。

自然との共生を軸とした国土の多様性の維持
SDGsの目標14「海の豊かさを守ろう」に関連して、マイクロプラスチックを含めた海洋ごみ対策など海洋環境の保全、自然環境の保全・再生・活用の推進
持続可能で魅力のあるまちづくり・地域づくり
生活に必要な機能を近接させた効率的で持続可能なコンパクトシティを目指した都市政策、小さな拠点を形成し、地域資源を利用した再生可能エネルギーの導入支援による効率的なまちづくりで温室効果ガス低減を推進
環境インフラやグリーンインフラ等を活用したレジリエンス(強靭さ)の向上
湿原の再生による洪水緩和に代表されるような、災害リスクの低減に寄与する生態系の機能を評価し、積極的に保全・再生することで、生態系を活用した防災・減災(Eco-DRR)の推進

環境を保全をしながら、持続的な街づくりのため共生し、取り込みどう活用していくか考えていく必要があるかも知れません。

重点戦略③ 地域資源を活用した持続可能な地域づくり

戦略③では、主に以下3つの視点から、持続可能な地域づくりのためSDGs未来都市および自治体SDGsモデル事業の成功事例を選定し、普及展開を目指しています。

地域のエネルギー・バイオマス資源の最大限の活用
地域の特性に応じて、太陽光・風力・水力・地熱・バイオマスといった多様な再生可能エネルギーを活用することで、地域のエネルギー収支を改善し、強い地域経済を構築
地域の自然資源・観光資源の最大限の活用
農業体験や漁業体験など自然や文化に触れる「グリーンツーリズム」「ブルーツーリズム」の推進
都市と農山漁村の共生・対流と広域的なネットワークづくり
森・里・川・海の地域資源(食・材料・エネルギー など)の持続的な活用(環境配慮商品の開発、ブランド化、観光の推進など)により生物の多様性の保全と地域経済活性化の良い循環の構築、上記各種ツーリズムによる滞在型観光の推進

まずは対象となる地域の特性を理解し、その地域に適正なエネルギー循環の仕組みを構築、他都市間での連携を通して地域活性を推進していくことが、より早い実現に繋がるのではないでしょうか。

重点戦略④ 健康で心豊かな暮らしの実現

戦略④では、地域社会の豊かな暮らしの実現のため以下3つの視点からの取り組みを目指しています。

環境にやさしく健康で質の高い生活への転換
人、社会、環境に配慮した消費行動の促進、食品ロスの削減、テレワークなど働き方改革によるCO2削減を推進
森・里・川・海とつながるライフスタイルの変革
自然体験のための社会的なシステムの構築、二地域生活・二地域居住や地方移住に必要となる一元的な情報提供や相談支援の充実を推進
安全・安心な暮らしの基盤となる良好な生活環境の保全
廃棄物の適正な処理技術の高度化・広域化・長寿命化の推進、および化学物質による環境リスクの最小化を図るため安全かつ効率的な製造、負荷を低減するための適正利用を推進

一人一人ができるゴミを減らす、働き方を変えるなどの身近な行動と、それを支援するための自治体の仕組みの構築がより豊かな生活の実現に繋がるかも知れません。

重点戦略⑤ 持続可能性を支える技術の開発・普及

戦略⑤では、最新技術の開発支援とその社会実装の推進のため以下3つのアプローチによる実現を目指します。

持続可能な社会の実現を支える最先端技術開発
天候や消費量をAI(人工知能)で解析することによる生産量や生産時期の最適化、IoT(モノのインターネット)等による点検・修繕・交換などの最適化、インターネット上でのシェアリングプラットフォームの構築などによりモノ・サービスを必要な時に、必要な量だけ提供する資源生産性を向上する取り組みを推進
また、限定地域での無人自動運転配送サービスの実現、ドローンの活用による物流の効率化で低炭素社会の推進
生物・自然の摂理を応用する技術の開発
鋼鉄より軽くて強い素材を植物の繊維からつくるセルロースナノファイバーの技術、またトンボの眼をヒントに開発されたカメラの広角レンズや蓮の葉の表面構造から開発された撥水技術などのバイオミメティクス(生物模倣)技術による環境負荷を最小限に抑えた最新技術の研究の推進
技術の早期の社会実装の推進
既に確立された技術や新たに開発された技術を社会実装し、普及させ展開していくために標準化の推進や合理化も含めた統合的なアプローチが必要となり、法整備や効果の評価手法の確立を推進

近年注目されているAIやIoT、自動運転などの最新技術を取り入れているところが前回との大きな違いとなっています。これらの技術の社会実装をいかに早くできるかの、インフラ・法整備が鍵になるのではないでしょうか。

重点戦略⑥ 国際貢献による我が国のリーダーシップの発揮と戦略的パートナーシップの構築

戦略⑥では、日本が持つ優れた環境技術やノウハウを世界でも多く採用するための多国間でのルール整備のため以下2点の取り組みを推進します。

国際的なルール作りへの積極的関与・貢献
気候変動分野においてはパリ協定の実施指針策定へ積極的に参加し気候変動対策の推進
自然環境分野においては生物多様性の保護のため愛知目標
への取り組みを主導
海外における持続可能な社会の構築支援
途上国におけるニーズを踏まえ、廃棄物発電、リサイクル、生活廃水処理、水銀対策などを含む関連制度・技術・維持管理までをパッケージ化し支援の基盤整備を推進

限られた環境資源の中で培ってきた日本独自の優れた技術やノウハウを、パートナーシップを組み国際社会へ展開し地球規模での環境改善を推進していくことが大きな貢献に繋がるのではないでしょうか。

まとめ

今回は、第5次環境基本計画の重点戦略の概要と具体的な取り組みについて紹介しました。
前回第4次の策定からSDGsの考え方を取り入れ大きく内容を改編し、さらにAI・IoT・ドローン・自動運転などの最新技術を積極的に活用することで環境改善を加速的に推進しようとしていることが分かります。
国内の個人や企業の環境リテラシーを向上させるとともに、国際地域でも影響力を持っていくためには個の力だけではなく、それぞれで連携していくことがより早い課題解決に繋がると思います。
私たち未来技術推進協会でも、「SDGs」と「未来技術」をテーマとした、アイデアソンやハッカソン、協会オリジナルSDGsボードゲーム会などのイベント企画を通して、企業、大学、投資家など人と人を繋ぎ環境問題を含め様々な課題解決に貢献していきます。

以上、Vona(ボーナ)でした。


参考