指1本で世界を動かす?SDGs達成の鍵「システム思考」とは? (後編)

こんにちは。TabiOです。

前回の記事に引き続き今回もシステム思考について紹介したいと思います。前回はシステム思考の概要とSDGsのような様々な要因が関わり複雑な問題に対して効果的なアプローチとして紹介しました。
今回はその後編ということで、前回紹介しきれなかったシステム思考で使用するツールについて紹介します。


まずはシステム思考のおさらいから。

システム思考って何?

あらゆる現象を1つのシステムとして捉え、全体の構造を把握し、問題解決に導くとされている思考方法です。要素の因果関係を「つながり」として捉え、全体の構造を「つながりの連鎖」として表現します。
以前の記事では有効な下記3つのツールを紹介しました。
(1)時系列変化パターングラフ
(2)ループ図(因果ループ図)
(3)レバレッジポイント

今回は下記2つのツールを紹介します。
(4)システム原型(Systems Archetype)
(5)ストック&フロー(Stocks & Flows)

一つずつ紹介していきます。

システム思考の強力なツール

(4)システム原型(Systems Archetype)

システム原型は、分野を超えて共通してよく見られる問題構造の典型的な「型」を示すもので、因果ループ図の定型のようなものです。
「システム・シンキング」によるとシステム原型には下記8つのパターンがあります。

  1. 漂流する目標(Drifting Goals)
  2. 問題のすり替え(Shifting the Burden)
  3. 成功の限界(Limits of Success)
  4. 成功には成功を(Success to the Successful)
  5. 応急対処の失敗(Fix That Fail)
  6. 共有地の悲劇(Tragedy of the Commons)
  7. 成長と投資不足(Growth and Underinvestment)
  8. エスカレート(Escalation)

すべて紹介すると長くなるので、イメージしやすい2つをピックアップして紹介します。
他のも見たいというリクエストがあれば作成します。。。笑

2. 問題のすり替え(Shifting the Burden)

問題から生まれた症状の解決には、根本的な解決策よりも、問題の症状を容易に軽減することができる対症療法的な解決策がとられることが多いです。ひとたび対症療法的な解決策がとられると、問題の症状が多少なりとも解決され、より根本的な解決策を実施しようというニーズが低下します。対症療法的な解決策はさらに、根本的な解決策や必要な能力を向上させる力を徐々に低下させるという副作用をもたらすというものです。

前回の復習になりますが、図の見方を説明します。
Sは、Sameで同じ方向に変化することを意味しています。(片方の要素が増えれば、もう片方も増えるという感じです。)
Oは、Oppositeで逆方向に変化することを意味しています。
Rは、ReinforceのRで拡張するループです。
Bは、BalanceのBで一定の状態を保とうとするループです。

医療を例にとるとわかりやいすかもしれません。
問題の症状を「風邪を引いた」と定義すると、根本的な解決策は「免疫力をあげる」となり、対症療法的な解決策は「薬の投与」です。副作用は「免疫力をあげる機会」となるかもしれません。

4. 成功には成功を(Success to the Successful)

「成功には成功を」は,AとBという2人または2つのグループが同程度の能力を持っていたとして、AがBより多くの資源を与えられた場合、AはBよりも成功の可能性が高くなります。はじめにAが成功すると、Aに対してより多くの資源を配分することが正当化され、時間がたつにつれ、AとBの間の成果のギャップはさらに広がっていくことになります。

これはスポーツ選手の例をとるとわかりやすいかもしれません。
例えば同じサッカーチームにAという選手と、Bという選手がいたとします。
Aの成功は「Aが試合で得点を取る」だとした場合、Aへの資源配分は「資金」と仮定します。Aのための資源は「パーソナルトレーニングをうける機会」とした場合、Aは
よりトレーニングで強化され試合で得点を取る可能性が上がります。
Bには逆のことが起こります。資金の配分が少なくなると、価格が高いパーソナルトレーニングを受ける機会は減り、Bが得点を取る機会が弱まるという例です。
選手には個人差があるので実際にはより複雑なループになる可能性がありますが、簡単な仕組みは説明できます。

以上のようにシステム原型のような型に、まずは当てはめて考えて見ると事象は意外とシンプルになるかもしれません。

(5)ストック&フロー(Stocks & Flows)
因果ループ図やシステム原型を作ることで各要素の相互依存関係を見ることができます。
そこに新たにストックとフローという2つの要素を加えるとより実際の状態に近い図になっていきます。
ストックとは、システムの中で蓄積する要素のことを指し、フローはその蓄積を決定する要素のことを指します。
下記図を見るとよりわかりやすいと思います。

この浴槽のシステムでは、「入ってくる水」があり、「出て行く水」があり、それらに応じて、「浴槽にたまっている水」の量が変化します。ここである一定の時間内に「入ってくる水」「出て行く水」が「フロー」(流れ)であり、ある時点で「たまっている水」が「ストック」(蓄積)です。
例えば、国の人口のシステムを考えてみた場合、2018年1月1日時点の人口が「ストック」で、そこから一年間の「出生率」や「入国する移民」は「インフロー」にあたります。「死亡数」や「出国する移民」は「アウトフロー」になります。

蓄積されている要素を把握することで、組織内の出来事やパターン、構造が理解しやすくなります。システム思考の中でも高度な手法の一つでもあり、より複雑な要素が絡み合っている組織や時間経過を意識する問題を分析する上で最適な手法とされています。

まとめ
いかがでしたでしょうか。
システム思考は理解して使いこなすととても強力なツールとなります。
今回紹介したツール以外にもシステム・ダイナミクス・モデリングやステークホルダー分析等他にもたくさんの手法が存在します。
より理解を深めていきたい方は調べて見ても面白いと思います。
システム思考を用いて、目の前で起こっている事象をより深く知り、図式化していくことで、仕組みや根本的な解決策が得られるかもしれません。
SDGsのような様々な課題を国や組織を超えて達成していくために、事象をシステムとして捉え、因果ループ図のようなツールで様々な関係者とコミュニケーションをとることで、多くの方と合意形成をしていくことが可能になるかもしれません。

以上。TabiOでした。


参考サイト

参考文献

  • システム・シンキング―問題解決と意思決定を図解で行う論理的思考技術(バージニア アンダーソン、ローレン ジョンソン著)
  • なぜあの人の解決策はいつもうまくいくのか?(枝廣淳子、小田理一郎著)