コンピュータは身にまとう時代!?スマートウェアの可能性

こんにちは。新しいもの大好き!伊藤彰彦です。

これまで想像もしなかった、様々な便利な製品やサービスが提供される世の中になってきました。今回の記事では、私たちが思い描く『コンピュータ』の在り方を大きく変えるかもしれない、「スマートウェア」についてご紹介したいと思います。


コンピュータの新しい形

皆さんは「ウェアラブルデバイス」という言葉をご存知でしょうか。「ウェアラブル端末」、あるいは単純に「ウェアラブル」とも呼ばれます。

ウェアラブル(Wearable)を直訳すると『身に付けることが(wear)できる(able)』となります。すなわち「ウェアラブルデバイス」とは身に付けて持ち歩くことのできる端末(コンピュータ)のことです。ノートパソコンやスマートフォンのようにただ持ち歩き可能というだけでなく、アクセサリのように腕や頭部、首などに身に付けられるものを「ウェアラブルデバイス」と呼んでいます。

代表的な例でいえば、Apple社が提供しているApple Watchなどの腕時計型の「スマートウォッチ」、Microsoft社のHololensやGoogle社が開発者向けに提供しているGoogle Glassといった、頭部着用型の「スマートグラス(ヘッドマウントディスプレイ)」が知られています。

ウェアラブルデバイス市場は年々拡大しており、2018年の世界における出荷台数は1億2,000万台を超え、今後さらに伸びていくと予想されています(参考:2022年までのウェアラブルデバイスの世界/国内出荷台数予測を発表)。

先日、2019年1月16日~18日に東京ビックサイトで開催された『第5回ウェアラブルEXPO』という展示会では、141社もの企業が、新しい機能を搭載したウェアラブルデバイスや、そのソリューション事例、デバイスを支える基盤技術等に関して展示を行っていました。

展示会で特に出展が多く目立っていたのは、眼鏡型の「スマートグラス」、そしてこれから紹介する、衣類型の『身にまとう』タイプのウェアラブルデバイスでした。そんなウェアラブル分野の企業が注目する新たな形のウェアラブルデバイス、「スマートウェア」について見ていきましょう。

スマートウェアの持つ様々な可能性

スマートフォン、スマートウォッチ、スマートグラスといった言葉からもイメージできるように、「スマートウェア」とはセンサーやバイブレーション等の機能を持たせた衣類のことです。

すでに多くの人が利用している腕時計型の「スマートウォッチ」は、ディスプレイによってメールやLINEの内容を確認したり、Suica等のIC機能を利用したり、心拍数や血中酸素濃度を測定し健康状態を確認したりといった用途が知られています。衣類型の「スマートウェア」にはどのような機能や用途が期待されるのでしょうか。

現在、スマートウェアで提案されている主な用途は、介護やリハビリなどのヘルスケアやスポーツ分野となっています。

すでにスマートウェアに実装されているものとして、着用するだけで心拍数を計測できる、心電図データを取得できる、カロリー消費量を測定できる、といった機能があります。これらを活かし、建設現場などの屋外作業者の健康・安全管理を行う作業者みまもりサービスや、介護福祉施設入居者の日頃のヘルスケアデータ管理、異常発生時のアラート発信といったサービスが展開されています。

スポーツ分野では、練習時にスマートウェアを着用して生体データを蓄積、体調の管理やコンディションチェックを行うサービスがあります。また少し変わった用途として、インストラクターがおらずともヨガの正しいポージングを教えてくれるヨガウェアなどが提供されています。

エンタメ分野やファッション業界でもスマートウェアは注目されています。誰かと抱き合ったり、肩を組んだりするとキラキラ光り、フェスで見ず知らずの人とも盛り上がれるという、少し変わったスマートウェア(ACT)が提供されています。また周りの人の反応を分析して自分に魅力を感じているか判断してくれるという、まるでアニメ「PSYCHO-PASS サイコパス」の世界を再現するかのような興味深い機能も開発されています(詳細はこちら)。

まさに「未来技術」と呼ぶに相応しい、面白い商品やサービスが今後もスマートウェア業界から展開されていくことでしょう。

スマートウェアを支えるのは高機能繊維

このように様々な応用の可能性を秘めたスマートウェアですが、どのような技術によって支えられているのでしょうか。ここではスマートウェアを支える基盤技術の一つ、「導電性繊維」について見ていきます。

身体の微弱な電流をつかまえたり、センサーを動かすためには、繊維自体に電気が流れる必要があります。通常の繊維に電気は流れませんが、繊維中に電気の流れやすい金属や黒鉛を埋め込んだり、繊維を金属の膜でコーティングすることによって、導電性を持たせることが可能です。導電性繊維は、静電気防止手袋や、医薬品工業・精密電子工業におけるほこり付着防止のための防塵服など、様々なところに応用されています。

一方、スマートウェア向けに生体信号を拾うとなると、人の肌への密着性が重要となります。また常に身体に密着するため、皮膚への影響や着心地も考慮しなくてはなりません。そして長時間の着用や洗濯をしても導電性が損なわれないという、耐久性も非常に重要です。

これらの課題を解決した繊維の一つに、NTTグループと東レ株式会社が共同開発したhitoe®があります。hitoe®は、ナノファイバーと呼ばれる非常に細かい(毛髪の140分の1)繊維に、導電性高分子(電気を流すプラスチック)を含有させた構造になっています。繊維が細かいため肌への密着度が高く、また細かい隙間に固着された導電性高分子が剥がれ落ちにくく、耐久性が高いというのが特徴です。

東洋紡STC株式会社が開発したCOCOMI®は、通常の服をスマートウェアに変身させるという面白い製品です。厚さが約0.3ミリと薄いフィルム状になっており、伸縮性に優れるほか、電子材料向けに展開する導電性ペーストが電気をよく通し、熱圧着で服の生地に簡単に張り付けができます。伸縮性の高さは耐久性の高さにつながっており、100回以上の洗濯に耐えられるとのことです。

繊維自体にセンサー機能や駆動機能を持たせるという面白い試みもあります。帝人株式会社と関西大学が共同開発した圧電ファブリックは、繊維の曲がりや歪みを電気信号として検出することができます。圧力により電気が発生するポリ乳酸繊維と、電気を流す炭素繊維を組み合わせることでこのような機能を実現しています。繊維の編み方を変えることによって検出できる歪みの信号が変わり、様々な編み方でスマートウェアに組み込むことによって、人の身体の様々な動きを精密に測定できるのではないかと期待されています。

おわりに

いかがでしたでしょうか。私達の生活を大きく便利に変えるかもしれない「スマートウェア」の可能性と、それを支える基盤技術について紹介しました。

個人的には、スマートウェアの技術開発において、NTTグループと東レ株式会社という異業種のコラボや、帝人株式会社と関西大学による産学連携など、技術同士の掛け算によって新しい技術が生み出されているという点に面白さを感じます。

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参考