自宅でお酒って作れるの?

こんにちは。山本睦月です。

突然ですが、皆さんはお酒はお好きでしょうか?
私は好きです。いえ、大好きです。愛しています。
お酒を飲む人は、どんなシチュエーションが多いでしょうか。
居酒屋でわいわい飲むのが好きな人もいれば、お家でしっぽり飲むのが好きな人もいることでしょう。

製造工程にITを取り入れ国内外で注目を集めている『獺祭』という日本酒があります。
お酒造りにITってどういうこと?と思いますが、例えば製造工程の途中で『もろみ』を作る際に理想とされる『BMD曲線(発酵日数と糖度などの関係)』というものがあります。微妙な温度調整や、適切なタイミングで水を加えるなど杜氏の経験に頼っていた部分を全てデータ化することで、杜氏に任せきっていた時より品質を安定させることに成功したそうです。

お酒の製造もIT化が進む昨今ですが、こんなことを思った人はいませんか?

「お酒って自分で作れるのかな?」

考えてみれば、私の知人に自分で飲むためにお酒を作っている人はいません。
しかし、自分好みの自分だけのお酒が作れるのであればこんなに良いことはないでしょう。

今回は『自分でお酒を作るには?』をテーマにまとめてみました。


お酒の法律『酒税法』

まず抑えるべきは法律面でしょう。
”お酒”の定義や税金に関しては『酒税法』という法律に記載されています。
まずは酒税法の最初に書かれている以下の文章から見ていきましょう。

~酒税法・第一条、第二条より抜粋~
“酒類には、この法律により、酒税を課する。”
“この法律において「酒類」とは、アルコール分一度以上の飲料(薄めてアルコール分一度以上の飲料とすることができるもの(アルコール分が九十度以上のアルコールのうち、第七条第一項の規定による酒類の製造免許を受けた者が酒類の原料として当該製造免許を受けた製造場において製造するもの以外のものを除く。)又は溶解してアルコール分一度以上の飲料とすることができる粉末状のものを含む。)をいう。“

~酒税法・第七条より抜粋~
酒類を製造しようとする者は、政令で定める手続により、製造しようとする酒類の品目(第三条第七号から第二十三号までに掲げる酒類の区分をいう。以下同じ。)別に、製造場ごとに、その製造場の所在地の所轄税務署長の免許(以下「製造免許」という。)を受けなければならない。ただし、酒類の製造免許を受けた者(以下「酒類製造者」という。)が、その製造免許を受けた製造場において当該酒類の原料とするため製造する酒類については、この限りでない。
2 酒類の製造免許は、一の製造場において製造免許を受けた後一年間に製造しようとする酒類の見込数量が当該酒類につき次に定める数量に達しない場合には、受けることができない。

出典:『電子政府の総合窓口 e-Gov :酒税法』

とても簡単に要約すると

・国が定める『酒類』に該当する物には『酒税』がかかる!
・アルコール分が一度以上のものは酒類(お酒!)
・お酒を作るときは国の許可をとってね!

とのことです。
酒税法で定められたお酒の種類、お酒を作るための製造場ごとに『酒類製造免許』を取得することが義務付けられているようですね。
酒類製造免許は1つとるごとに15万円の登録免許税がかかります。

オリジナルのお酒を作る夢は潰えてしまったのか…
日本に住む私にはお酒を作ることは許されないのか…

大丈夫です、皆さまご安心下さい。酒税法には消費者が自分で飲むために作ることができる特例が用意されています。

自宅で作る自家醸造

国税庁のHPに以下のような記載があります。

焼酎等に梅等を漬けて梅酒等を作る行為は、酒類と他の物品を混和し、その混和後のものが酒類であるため、新たに酒類を製造したものとみなされますが、消費者が自分で飲むために酒類(アルコール分20度以上のもので、かつ、酒税が課税済みのものに限ります。)に次の物品以外のものを混和する場合には、例外的に製造行為としないこととしています。
また、この規定は、消費者が自ら飲むための酒類についての規定であることから、この酒類を販売してはならないこととされています。

1 米、麦、あわ、とうもろこし、こうりゃん、きび、ひえ若しくはでん粉又はこれらのこうじ
2 ぶどう(やまぶどうを含みます。)
3 アミノ酸若しくはその塩類、ビタミン類、核酸分解物若しくはその塩類、有機酸若しくはその塩類、無機塩類、色素、香料又は酒類のかす

出典:『国税庁【自家醸造】』

消費者が自分で消費するために、酒税が課税済みのアルコール分20度以上のお酒と規定に定めらている以外の物を使ってお酒を作るのは例外的に認める。ということです。
規定に定められている物とは、お米や麦、ブドウなどビールやワインの製造に使われている物を指します。

つまりは製造方法さえ気を付ければ梅酒などの製造が可能ということです!夢が広がります!
ただし、これはあくまで自分で消費するために特例で許可されており販売はできませんのでご注意ください。この辺りは酒税法第四十三条に書かれています。
また、第四十三条の第11項には

前各項の規定は、消費の直前において酒類と他の物品(酒類を含む。)との混和をする場合で政令で定めるときについては、適用しない。

とあります。
これは、例えば街中にある居酒屋やBARでカクテルを作る際も、厳密には法律違反になってしまうため特例として記述されています。
直前というのがやや曖昧な気もしますが、これによって街中で色々なお酒を楽しむことが出来るわけです。

構造改革特別区域法に設けられた酒税法の特例

個人ではなくお酒を作る会社を作ろうと一念発起した場合にも、実は大きな課題があります。
酒税法第七条には、年間の最低製造数量が記述されています。例えば私が好きなビールだと年間60キロリットルの製造が義務付けられ、それを下回った場合は免許取り消しになってしまいます!60キロリットルとは500mlのロング缶でも3万本なので、結構ハードです。
ちなみに、これは1994年4月に酒税法が改正された後の数字で、改正前は年間2000キロリットルという途方もない数字でした。

しかし、実はこれにも特例が用意されています。

地方の活性化のため、特定の地域に対して国が規制緩和する取り組みに『構造改革特区制度』というものがあります。
特例的な規制緩和による地方経済の活性化を促進する取り組みで、2002年以降全国各地1104件以上の特区が国から認められています。
その構造改革特区制度をまとめた法律『構造改革特別区域法』の第二十八条には酒税法に関する特例が記載されています。

これによると、農林漁業体験民宿業や自身の営業場で飲むために提供する商売を営む農業者、構造改革区域内で生産された農産物を用いた酒類の製造を通じて地域の活性化が認められた物などは、酒税法の第七条に記述されている年間の最低製造数量を適用しない。というものです。これによって地元の特産品を使った日本酒やワイン、クラフトビール、どぶろくなどの地酒の製造が可能となり、それを利用した地方の活性化が促進されました。

まとめ

いかがだったでしょうか?
自作のビールが作れないのは残念ですが、規制緩和により地酒が更に増えていくことが期待され大変楽しみです。

お酒作りは、様々な側面から今後ますます盛り上がっていくことでしょう。
これまで数十年の経験を経た職人がいないと出来ないと思われていた分野でも、ITの力を取り入れることでむしろ安定的に供給ができ、その技術や製品を未来に引き継ぐことができます。
日本の未来を想いながら、今夜もお酒を消費することで社会に貢献していきます。

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参考