疾患を理解するためのVR
こんにちは、鈴木彩です。
近年、AIやVR、ARなどの新しい技術が日常生活に浸透しつつありますが、医療現場にもさまざまな形で役立てられています。
そのなかでも、仮想的な世界を現実世界のように体感できるVR(Virtual Reality)技術を使い、実際の症状を体験することで理解を深める取り組みが行われています。
また、VRについては以下の記事もご参照ください。
VR技術_ビジネスへの活用
- 認知症体験
- 統合失調症体験
まず、認知症という疾患をご存知でしょうか?様々な原因(加齢、生活習慣病などの病気など)で起こる疾患です。症状として、物忘れが多くなったり、幻覚が見えてしまったり、空間を認識することができなくなったりすることがあります。更には手足の麻痺など、日常生活での支障がでることもあります。
認知症は怪我などの体の表面に出たり、風邪などの多くの人が経験したりするものではないので、なかなか理解を得られにくい疾患でもあるでしょう。
そこで、認知症を理解する人を増やそうと株式会社シルバーウッドでは「VR認知症プロジェクト」と言うものを立ち上げました。認知症の方と接する機会のある企業や学校からもうすでに4000人以上の参加があります。
VRによる認知症体験を通して実際に認知症の方に対する理解を深められるものになっています。
制作されている映像には、電車の中で居眠りをしてしまって今いる場所がわからなくなってしまったという事例や、空間認識能力が低下してしまい、車から降りられなくなってしまったという事例があり、認知症の方の体験をもとに再現されています。
認知症と言われている方が何を思って生活しているのか、あるいは生活しようとしているのか理解するきっかけや、そのような方に対してどのように支援したら良いのか考えるきっかけになりそうです。
製薬メーカー、ヤンセンファーマでは統合失調症に関する理解を深めるためのツールとして「バーチャル・ハルシネーション」という疾患教育プログラムを公開しました。
統合失調症とは、幻覚や幻聴、妄想などの症状が特徴的な精神疾患です。他人に監視されている、何かに追われている、などと思い込んでしまい、そこから引きこもりがちになったり、攻撃的になったりすることもあります。
原因はストレスや遺伝、病気など原因は様々ですが、こちらも表面的に現れるものではないので、なかなか理解が得られにくい疾患でもあります。
この「バーチャル・ハルシネーション」は統合失調症の幻覚や幻聴などの代表的な症状をリアルに疑似体験できるものになっています。
ダンボール製の組み立て式ヘッドセット「ハコスコ」と、専用アプリを入れたスマートフォンを組み合わせて映像を視聴できます。映像は上下左右、180°まで頭を動かしてみることができます。
内容は、統合失調症の方に多い幻聴の症状に重点を置き、①軽蔑、嘲笑、命令してくる幻聴、②行動を予言してくる幻聴、③生活音に重なって聞こえてくる幻聴、④過度におだててくる幻聴の4つをを体験することができます。
動画は下記、参考に記載した「統合失調症ナビ」から視聴できます。
VRを通して統合失調症の症状を体験して理解を深めることができ、①の項目にも挙げた通りどのように支援したら良いのか考える良いツールになりそうです。
知識として知っているものの理解を深めるために疑似体験できることはVRの最大の強みと言えそうです。
今まで理解が得られにくかった疾患に対し、VRをはじめ様々な未来技術をとおして理解できる人が増え、どのように支援したらよいか検討が可能になると、より良い社会となるのではないでしょうか。