『理系女子が輝く働き方改革』~日本、アジア、イスラエルのSTEM事例に学ぶ~イベントレポート

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『理系女子が輝く働き方改革』~日本、アジア、イスラエルのSTEM事例に学ぶ~イベントレポート

未来技術推進協会女子部では、10/17(水)に3回目のイベントを行いました。
弊協会の女子部は理系の分野において、もっと女性が活躍できる分野があるのではないかと思い、活動を始めました。
第3回となる今回は、「『理系女子が輝く働き方改革』~日本、アジア、イスラエルのSTEM事例に学ぶ~」です。
「可能性」をテーマに、ゲストの経団連の小川さん、笹川平和財団の小曽木さん、イスラエル女子部の三木さんから、どのような社会が女性が活躍する社会なのかお話しいただきました。
女子部のイベントでありながら、男性にも参加頂いており、大変好評なイベントとなりました。


STEM分野で活躍する女性は少ない?

STEMとは、科学(Science)・技術(Technology)・工学(Engineering)・数学(Mathematics)の分野のことで、世界でも女性の活躍が少ない分野とも言われています。


出典:「学校基本調査」(文部科学省)

上記のグラフは平成30年度学校基本調査における日本の女子学生進学の割合です。
理学系の大学の進学率は27.8%、工学系の大学への進学率は15%。徐々に進学率は上がってきていますが、それでも人文科学、教育系の大学への進学率に比べると少なく見えます。

確かにグラフとしてみなくても、理学や工学などの理系は男性が多く、人文科学、教育などの文系は女性が多いというイメージがあるかもしれません。
なぜこのような現象が起きているのでしょうか。
ここに女性の活躍できる可能性がありそうです。


まず、3名のキャリアを伺いました。

小木曽麻里様(以降、小木曽様)

大学後銀行へ就職し、資本市場関係の部に配属となり、マーケットについて学びました。そこ
からさらに環境学などについて学びたいと思い、留学をしました。
卒業後は世界銀行へ就職し、1年間はカザフスタンなどへ行き、水と環境問題のインフラ案件に
従事し、その後銀行での経験やご縁から、アジアの金融市場の仕事をし、その後は日本で政治
リスクや保証の仕事をしました。
世界銀行の退職後、コンサルティングなどを経てその後笹川平和財団に所属し、2年前から社会
的インパクト投資などの利益だけではなく、社会的に意味のあるもの、社会的にリターンを追求
するファンドを立ち上げ、女性の起業家に投資していくことをしています。
高校の時に本当はバイオ関係の分野に進みたかったのですが、物理が苦手で経済に進学しました
が、その後やはり興味のあった環境分野にて留学しました。
大学だけではなく、インターンや仕事でも貪欲にやりたい事をやっていくのが良いんじゃないか
と思っており、私も社会課題、女性関係の仕事はずっと関心があって取り組んできました。

小川尚子様(以降、小川様)

一般社団法人 日本経済団体連合会で仕事をしています。
経団連では大企業を中心に1500社が集まっており、日本の経済や社会を良くしていくための政策提案などの取り組みをおこなっています。
現在は、科学技術イノベーション担当で、特にSociety5.0を担当していて、より良い未来を作るために、技術を活用した社会の変革を考えるという事をしています。
学生時代は興味心で専攻を決めたため、キャリアスタート時は多くの努力を必要としました。
しかし、その後のキャリアを通じて感じたのは、勉強したこと、仕事で体験したことはすべて無駄にはならないということです。
今は世の中を良くしたい、暮らしやすく平和な社会にしたいという思いで活動していて、そこには理系とか文系という区別はいらないと思っています。
これからの時代は、誰でも文系・理系両方の知識が必要になります。私も理科や数学をもっと勉強しておけばよかったと今になって思いますが、まだ人生100年の半分なので、ここから学び直せば活かしていけると思っています。

三木ありさ様(以降、三木様)

大学時代にフラワーショップを立ち上げに参画して楽天ブランドのトップに成長させました。
その後外資系メーカーに、その企業初の新卒女性マーケターとして採用されCRMプログラム作成やビジュアルマーケティングを担当しました。その後ベンチャー企業数社で新ブランド立ち上げを経て、現在はイスラエルの専門商社として働いています。(2018年10月17日当時)
元々は文系なんですが、今はどっぷり理系の仕事をしています。特に私がやっているのは、エンジニアたちが開発した「技術」とマーケティングを駆使して、いかに世の中にフィットさせるか考えています。
イスラエルの専門商社として仕事をしているのは、イスラエルがグローバルで戦えているので、そこを勉強したいと思ったからです。

3名とも、ご自身の経験を大事にされているようでした。

活き活きとご自身のビジョンを持って活躍されている姿はとても素敵ですね!

STEM分野における日本と世界の違いは?

STEM分野の日本の現状や、課題を教えていただきました。

日本での女性の活躍を進めるヒントがたくさん見つかりました。

小木曽様

日本は世界から見てもSTEM分野にいる女性の割合は一番少ないです。
スペインが一番多く、日本はその約半分の割合しかいません。
日本では無意識に女性に対する偏った見方(ジェンダーバイアス)をする傾向が強く、そのため、
どんなに改善しようとしてもバイアス、がかかってしまいます。
なので、それを分かった上で考える必要がありますね。
どこで理系の女性が減るのかというと、最初は高校、次に大学へ進学する時です。
日本では大学のジェンダー関連のデータが取られていませんが、ジェンダーアセスメントを導入
したら良いのではないかと考えています。
また、女性の起業家の95%が社会課題を解決しようとして起業しています。男性は技術を極める傾向にありますが、女性は技術だけではなく、社会課題にも注目している傾向があるようです。
この男女の視点の違いが女性が活躍できるポイントになるかもしれません。

三木様

イスラエルの女性は子育てをしながらバリバリ働いている人がほとんどです。1990年代からクォーター制を導入していることもあり、女性が活躍しやすい環境づくりができています。

そもそも、イスラエルは、四国くらいの国土に880万人が住む日本よりもはるかに小さい国です。しかし、そんな小さい国にもかかわらず700~1000社のスタートアップ企業が生まれています。
日本ではあまり知られていませんが、USBはイスラエスで生まれたもので、Googleの検索機能もGoogleのイスラエル拠点が開発されていると言われています。

なぜそんな小さな国で多くのスタートアップが生まれ、世界で活躍しているのかというと、イスラエルの国内にはマーケットがないので、はじめからグローバルで企画や開発などを考えているからだと思います。

また、イスラエルではバーで科学者が一般人にレクチャーを行う「サイエンス・イン・ザ・バー」などが盛んで、大人がサイエンスを楽しんでいるのを子どもが見て育つ文化もあります。
日本では「サイエンス」というとオタクのイメージがあるようなので、どうやってエンターテイメントとして昇華するかが鍵になりそうです。

小川様

日本の大企業はここ数年、女性活躍に本気で取り組んでいます。
ただ、製造業、大企業の社員の多くは技術系ですが、大学に技術系の女性はほとんどいないので、争奪戦になっていたりします。
そのため、私はよく女子中高生の親御さんに就職を考えるなら理系がお得ですよと言っています。

ただ、理系の仕事がイメージしにくかったり、母親や学校の先生などからの影響でひとまず女子は文系を選んでしまうことが多いんですよね。経団連では政府とともに理工チャレンジというイベントを行っています。女子中高生に対して全国の工場、研究所の仕事を見てもらい、実際に働いている女性の社員の話を聞いてもらっています。
実際に見てみることで理系のキャリアがイメージしやすくなるようで、理系に進学してみようという声も多くなってきました。

もう一つ、企業も変化する必要があると考えています。
多くの企業の技術部門は管理職以上になると男性ばかりになってしまいます。
今、日本の大学や企業の研究の質が落ちていると言われています。
海外の名だたる大学では国や年齢、性別関係なく様々な人が集まりそこから新しいイノベーションが生まれています。
日本の企業、大学では日本人の男性のみが集まっていることが多いので、そこにいろいろ取り組める余地があるでしょう。

私達ができることは?

日本のSTEM分野での現状や伸びしろが見えてきました。

では、私たちが女性の活躍を促していくために私達ができることは何でしょうか?
こちらは代表して三木様に答えていただきました。

三木様

STEM教育という面において、まず、教育というと国が中心となって取り組むイメージが強いと思いますが、本来、公教育(学校)、家庭教育、第3の場所(塾など)の3つの柱で成り立っています。
個人的には、特に教育で一番重要なのは「家庭教育」ではないかと思っています。親子で触れ合う時間が一番長いはずなのに、日本ではあまり「家庭教育」が重要視されていないように感じています。

そもそもイスラエルでは、13歳までに「あなたの人生の価値はなんですか?」という答えを見つけるよう促されます。子どもたちはこの哲学的な問に対して「家庭教育」を通してひたすら問われ続けます。
周りの大人は子どもを大人扱いして道を示し、ひとりの人間として、どんな答えを出すか見守ります。日本では、よく「公教育」をどう変えるかという議論になりますが、もっと家庭でできることがあるのではないかと考えています。

確かに、家庭教育ならすぐに取り組めそうですね。

ほかにも、小木曽様が仰っていたように、ジェンダーバイアスがあると自覚しているだけでも変わることはあるかもしれません。

最後にメッセージをいただきました。

三木様

STEMの分野で活躍する女性、女性の管理職など、ロールモデルが身の回りにいないと消極的になってしまう方もいるかも知れません。
しかし、ロールモデルは時代によって変わります。いないと思うなら、自分たちでなって見るのはいかがでしょうか。次のロールモデルとなるような女性を応援する格好いい男性が現れることにも期待しています。

小木曽様

人を採用する場面で女性と男性がいた時に無意識に男性を選んでしまうのはそこにジェンダーバイアスがあるためです。
まずは自分たちののジェンダーバイアスを知ることから初めてみてはいかがでしょうか。

小川様

自分とは違う立場の人に対する想像力を持ってほしいです。
それは男女の違いだけにとどまりません。
子どもたちをみていると、知らないことに興味を持ち、学びたいという欲求を人は生まれながらに持っている事がわかります。大人になってもそうした気持ちに素直に学び続けられるようになれば、社会はより良くなっていくと思います。

まとめ

理系、特にSTEM分野は男性が多いのが現状です。
しかし、AIやIoT、ロボティクスなどのまさにSTEMに関する技術が発展しつつある今日、日本が世界で活躍するためには理系・文系の枠に収まっている場合ではないのかもしれません。
また、男女で考え方の違いはあるかもしれません。性別にかかわらず、年齢や育った環境によってものの見方や考え方も変わるでしょう。逆にその違いを活かすことがイノベーションにつながる可能性は十分にあります。
今回のイベントでは女性だけではなく、男性の参加者の方も多く、女性の活躍を望んでいるのは女性だけではないことを感じました。
今後も、私たち未来技術推進協会ではSTEM分野における女性の活躍を応援し、技術で社会に貢献していきます。

<ゲストパネラー紹介>

小木曽麻里様
2016年1月より笹川平和財団国際事業企画部長を経て、現在ジェンダーイノベーション事業グループ長。2017年に運用総額100億円規模の「アジア女性インパクトファンド」を設定し、アジアにおける女性の機会創出とジェンダー格差是正の取り組みを行う。日本長期信用銀行、世界銀行グループ多国間投資保証機関(MIGA)東京事務所長、Kopernikアドバイザリーボード、ダルバーグ東京事務所長を歴任。東京大学経済学部卒業。タフツ大学フレッチャー校修士。国際開発機構海外投融資委員会有識者委員。2017年「Forbes世界で闘う日本の女性55名」に選ばれる。


小川尚子様
一般社団法人 日本経済団体連合会産業技術本部上席主幹
東京大学教養学部(国際関係論専攻)卒業後、1994年に社団法人 経済団体連合会(現・一般社団法人 日本経済団体連合会)事務局入局。
広報部、国際本部、環境・技術本部を経て、2003年~2006年外務省出向、在ジュネーブ国際機関日本政府代表部勤務を経験。
2009年産業政策本部主幹。2013年政治・社会本部主幹。2016年より現職。


三木アリッサ様(Miki ALISSA)イスラエル女子部代表/ライフイズテック(株) グローバル事業部
1992年生まれ。早大法学部在籍中に、プリザーブドフラワー専門ブランド立ち上げに参画。楽天ナンバーワンブランドに育てる。卒業後外資系メーカーにその企業史上初、学卒マーケターとして採用されCRM担当に。その後日本酒ベンチャーにて新ブランドたち上げに参画。イスラエル専門商社で新規事業開発マネージャーとして主にHealthTech、EdTech製品の担当を経験した後、現在はライフイズテック株式会社グローバル事業部でITを活用した教育の分野へフィールドを変え活躍の場を広げている。また、イスラエル女子部立ち上げ代表就任。これまで延べ1000名に「イスラエル × 教育・起業」などテーマに講演、FNNプライム・ワイヤレスワイヤーニュースなどで執筆。2018年月7月号「Forbes JAPAN地球で耀く女性100人」最年少掲載