自分の中の主人公を見つけて、応援してあげてほしい!はつめ選手が語るesportsへの想い

esports(eスポーツ)をご存知でしょうか?
esportsは「エレクトリックスポーツ(Electronic Sports)」の略で、電子機器を用いて行う娯楽、競技、スポーツ全般を指し、コンピューターゲーム、ビデオゲームを使った対戦をスポーツ競技として捉える際の名称です。
日本では、最近耳にするようになってきた新たなジャンルのスポーツですが、海外では2000年代から浸透し始め、欧米や韓国ではサッカーや野球などのメジャースポーツに匹敵するほど人気のスポーツとなってきています。

日本では2018年2月にesports産業の普及および発展を目指す新団体「一般社団法人日本eスポーツ連合」が設立され、esports発展のための取り組みを進めています。
VRやARなどの最新のテクノロジーを活かした競技も増え、ますます盛り上がりを見せています。

このような背景を踏まえ、プロの格闘ゲーマーとしてesportsの大会出場やイベント運営、配信など日本での発展を牽引する第一人者として精力的に活動しているはつめ選手と、「日本の若手から世界に向けてイノベーションを起こす」というビジョンを持つ私たち協会のつながりを感じながら、お話を伺いました。


■–VRやARなどの未来技術の中で、なにか興味があるものはありますか?

ARドッヂボールなどもあり、VRやARはesportsに入ってきています。ゲーム上の女の子が目の前にいるなど、当初は驚くこともありましたが、ゲーマーが夢見ていた世界がきているなという感覚はあります。
ただ、VRは一人で遊ぶ用途が多く、ARは始めにくい環境にあると感じています。
VRゲームの制作会社が設立した会社のオフィスや、新宿のVRゾーンでは競技ができますが、家でできるかというとまだまだこれからという印象ですね。

■–設備面で整うのはまだまだこれからなのですね。
はつめ選手についてお聞かせください。esportsを始めたきっかけは?

小学校3年生の時に、父と一緒にFPSと呼ばれるシューティングゲームなどの競技性のゲームを初めたことがきっかけです。当時はまだesportsという言葉はありませんでしたが、父はオンラインでチームを組んでおり、気づいたら自分もやっていました。
なので、父の影響ですね。

当時はプロという概念はありませんでした。私が中学生の時、自分と同じタイトルをプレイしていたチームがプロチーム化し、プロゲーマーという存在を初めて認知しました。
※FPS:ファーストパーソンシューターの略で、主人公視点で武器などを用いて戦うアクションゲーム

ただ、プロが集まったというより、強かったチームにスポンサーがついたようなものでした。
私は自分がもっと強ければなれるんだろうな、なれたらかっこいいなとは思っていました。プロになることはゲーマーとして憧れだと思うので。

■–はつめさん自身は、最初からプロになりたい!とはあまり思ってなかった?

最初は全く考えていませんでした!
高校生の時に、アルバイト先で格闘ゲームの大会が開催されているのを見たのがプロを目指した最初のきっかけです。
当時は広告代理店に就職して憧れのプロゲーマーを支える仕事に就こうと考えていました。迷いが生まれたのは、大学AO入試1週間前です。好きなesportsのプレゼンをしようと準備しているところで、「最初からプレイヤーとして活躍することをあきらめていいのか?」と疑問に思いました。
そんなとき、アルバイト先で行われた格闘ゲームの大会で強いプレイヤーがインターネット配信や、会場の観客などを含め何千人というお客さんを湧かせている姿を見て、esportsを通じて誰かの心を動かしたい、喜ばせたい、好きなことを伝えていきたいという思いが生まれたのを思い出したんです。
人生一度きり、好きなことのために綱渡りしてもいいかなと思って、受験一週間前に受験をやめました。
受験をやめてからは卒業まで時間があったので、18歳女子だった私が一人で「こういうことをやるんで一緒にやりませんか?」と営業資料を作って5~6社の企業を回りました。その時まさに、株式会社コンプに出会いました。
コンプのスローガンは【自分の好きなことに向かって走り続ける人を応援する】だったので、私のプレゼンを「いいじゃん!」と言ってもらえて、今に至ります。

最初は収入が安定せず、厳しかった時期もありました。コンプも、今までゲームに関して知識がなくスポンサードも初なので、何をしてあげればいいかわからなかったようでした。中だるみの時期もありましたが、最近では色々な企業様が知ってくださり、プロゲーマーとしてインターネット番組に呼んでもらえるようになりました!

受験のときも、「本当にこれでよかったのかな?」と迷うこともありました。同級生は大学入試を頑張っているし、卒業して大学生になった友達は、ツイッターやフェイスブックなどで楽しそうな話題を投稿していたり。

それでもesportsを続けようと決心したのは、受験をやめて卒業するまでの間に梅原大吾さんが書いた本を読んだことがとても大きいです。
本を読んで、梅原さんも大学行かずに、一度ゲームから離れたり、紆余曲折いろいろあって今がある事を知りました。
本の中で「自分たちと同じ世界に来ることはあまりおススメできないが、本気でやるなら僕は挑戦するのを歓迎する」と仰っていて、私は本気でやってやろうじゃん。と思ったのです。それがきっかけとなって吹っ切れました!

梅原さんとはたまに仕事でお会いします。あの本のおかげで今の私があるんですよ!といつも心の中で感謝しています。

■–まさに、人生を決めるきっかけとなった人なんですね!もし、梅原さんがこの記事をお読みになったら、はつめさんのお気持ちがわかってしまいますね。

はい、バレてしまいますね(笑)

※インタビュー写真

■–esportsで一番楽しいことはなんですか?

シューティングゲームを初めたときから、強気な男性を負かせるのが一番楽しいですね!
女性はなめられがちなので、「お前女だと思ってナメてただろ、勝てると思って申し込んできただろ、ざまみろ!」と思って倒すことが好きです(笑)
esportsは学歴、年齢、ハンディキャップ、性別もなにも関係ありません。誰でも頑張れば活躍できるフィールドがあることがとても良いところだと思っています。
他にも、新しいコミュニティの形成に役立っていると思います。好きなものを通じて大人や同世代、海外の選手とも仲良くなれるのがとても良いですね。
様々な選手と仲良くなったおかげで、コミュニケーションやイベントの運営知識を学べたり、機械やIT、英会話なども学べたりすることができました。esportsを通じて学校では出来ない体験を沢山積むことが出来ました。

■–それはとても素晴らしい経験ですね。逆に、esportsの悪いところはありますか?

始めるのにお金がかかることです。
パソコンのゲームなら、パソコン、周辺機器、場合によっては回線も新しく引く必要があります。
他には、esportsはまだ認知度が低いので、周囲の理解を得るのが難しいのも課題の1つです。
特に私達の世代や学生は、親の協力がないと続けるのが難しいです。ゲームに本気になることに対して親の理解を得ることはなかなかできません。
私の場合、「大学に行かずにesportsを本気でやります!」と言って親は理解してくれましたが、これは特殊なほうだと思います。実際に理解してくれる親がどれだけいるでしょうか。

私も美容室へ行ったときに、職業を聞かれても何も言えない事もありました。
学生時代には「esportsをやってるんだよ!」と言っても、誰もわかってくれる人はいませんでした。学校の先生からは「ゲームなんかより勉強をしなさい」と言われることも多かったです。
私がやってることはもしかして悪いことなのか、と悩むこともありますし、周囲の理解が得られずに競技に参加できなかったり、辞めていくプレイヤーもたくさんいます。

ゲーム自体よくないことだと考える方は未だに多いので、そういう方の理解も得られれば、esportsはもっと盛り上がると思います。

■–少し話題を変えます。esportsは、女性が少ないイメージがあります。女性が増えるにはどうしたら良いと思いますか?

女性を受け入れる環境に変わること、プロになることに興味を持つ女性が増えることでより女性プレーヤーは増えると思います。
目立ってる女性が少ないだけで、プレイヤー自体は一定数いるんです。
ただ、その人たちが表に出てこないのは、今活躍している女性選手が批判されやすかったり、叩かれたりしているのを見て、表に出たときにどのように言われるかわからないと不安に思い、表に出たくないと思っているのではないでしょうか。
まだまだ、女性が活躍しにくい環境だと思います。
女性も先ほど言った通り、性別での差はないから努力した分だけ強くなれるし、今強くなれば話題性も出ます。
女性を特別扱いしてほしいのではなく、受け入れてほしいです。また、そもそもプロになることに興味を持つ女性が少ないので、もっと興味を持ってほしいなと思っています。
そうすれば、もっと女性プレーヤーは増えると思います!

■–私たち協会も似たような思いがあります。技術者って、イメージ通り女性が少ないんです。こちらとしては、専門性の高さよりも、「ちょっと興味がある」という方は大歓迎!もっと女性が増えたらいいなと思ってます。

同感です。esportsだと、ゲーム自体に興味が無くてもゲームキャラクターの声優さんが好きだからという理由や、プロゲーマーの方が格好良くて好きだからという理由など、正直どんな切り口でも興味を持ってもらえたらそれで良いと思います。興味を持ってもらうことが何よりも大切です。
格闘ゲームだとプレイヤー1人ひとりにプレイヤーとしての歴史や人間としてのストーリーがあるので、そこから、人を好きになるのもいいと思っています。
私がプレイしているゲームに興味を持っていただいたり、ゲームはわからなくても私のことを応援してくださったりする方の中には、そこからesportsに興味を持つ方もいます。
女性を増やすという観点で考えると、かっこいい男性プレイヤーをアピールするのも、esports普及の一つだと思います。
顔が好きだから一緒にプレイしたいからでも良いと思います。

■–確かに、間口は広げたいですね。

そうですね。
本気でやっていけば業界全体にお金が回るし、努力次第でどうにでもなるのがすごく良いなと思いますね!
ゲームを通じた人の繋がりも大切です。esportsは誰かの支えになっていると思います。誰でも頑張れば活躍できる場です。

ただし、のめり込み過ぎずにちゃんと学業も修了した上で活動していってほしいですね。

■–アメリカ、韓国のesports盛り上がりはすごいですよね。平昌オリンピック公認大会が初開催されましたが、日本でもっとこうなったらいいなという希望はありますか?

学生時代にもっとコミュニケーションを取れる人が増えるといいですね。
学校で部活、サークルができれば、若いプレイヤーはもっと増えると思います。学生のうちからゲーマー同士のコミュニティを現実世界で持つと、プレイヤーが育ちやすい環境が作れそうです。
会社では、休みが取りやすくなると良いですね。格闘ゲームだと、会社の休みが取れずに大会に参加できない選手が多くいます。
今ではいろんな企業が注目し始めていますが、もっといろんな企業を巻き込んで、大きなイベントを開きたいです。

韓国だと、芸能人と変わらないくらいファンがいて、プロ選手は兵役免除もあります。
他にも、海外ではesportsで大学推薦や単位免除の制度もあります。
そこまで行かずとも、日本ではまず認知度を上げることが大切だと思います。

■–esportsの選手としてどうなっていきたいですか?夢を教えてください。

まずは強くなって様々な実績を残し、いろんなところで表に立って、esportsを広めるきっかけ作りをしたいですね。
ゲームの世界は強ければ解決することがよくあると思っているので、大会に出る機会を増やしたいし、大会で優勝もしたいです。プロのプレイヤーとして早くトップに追いつきたいですね。
そのうえで、esportsを広める活動をしたいです。私のような若手女子が大きな大会で優勝すれば、「こんな人いるんだ!」って興味を持ってくれる人が増えると考えています。

もう一つは、高校生時代のアルバイトで大会を見て感動した経験から、今度は自分の手で好きなものを色んな人に伝えていきたいです。

■–まだesportsをやったことがない人に、一言メッセージをお願いします。

どんなきっかけでもいいから、まずesportsというものを知ってほしいです。興味を持ってほしいですね。
esportsの入り口は広いので、興味を持つきっかけは何でも良いと思っています。ゲームは遊びと思っているかもしれませんが、ゲーマーは真面目にesportsを頑張っています。
家族や友達など、周りにesportsやってる方がいれば、ぜひ興味を持ってほしいと思います。
そして、興味を持ったのであれば、誰かひとりでもプレーヤーの方を追いかけてみると面白いと思います。
esportsのプレイヤーを好きになったのであれば、仮にゲームは好きではなかったとしても、その人自身を好きになってほしいと思います。

おわりに

EVO(Evolution Championship Series)という世界最大規模の格闘ゲームトーナメントやTWFight Majorという台湾の格闘ゲーム大会に出場されるなど、精力的に活動しているはつめ選手は、esportsを通じて「自分の中の主人公を見つけて、その主人公を応援してあげてほしい。」との想いをもっていらっしゃいます。
インタビューは終始和やかに行われましたが、その中ではつめ選手から感じたのは、プロとしてesportsの未来を切り開いていこうとする覚悟と強い意志でした。
未来技術推進協会でも、esportsを始め、AIやVR、自動運転などの最新のテクノロジー研究や活用事例などの情報発信、講演会・アイデアソン等のイベントを通じ、社会が抱える様々な課題を解決できるよう、貢献してまいります。

こちらのSHIBUYA GAMEのページでは、はつめ選手が掲載している記事をご覧になることができます。
ぜひ、こちらも御覧ください。
https://shibuya-game.com/archives/author/hatsume

また、はつめ選手の公式ツイッターも公開中です。
はつめ選手の日常も垣間見えるかも?
https://twitter.com/hatsumememe

参考