自動運転社会の実現に向けた開発動向と戦略 Vol.2

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自動運転社会の実現に向けた開発動向と戦略 Vol.2

こんにちは、Vona(ボーナ)です。
前回記事では自動運転の概要と開発ロードマップを紹介しました。
今回は、自動運転に必要な具体的な技術、社会実装に向けた課題について紹介します。


自動運転の実現に必要な技術

自動運転を実用化するためには、大きく『車両の駆動制御』『センシング制御』『クラウド通信』の3つの領域での技術確立が必要となります。

従来の自動車技術に加えて、センシング技術やAIなどのコンピューティング技術、あらゆる情報通信に必要なクラウドコンピューティング技術などを組合わせる必要があります。

自動運転ビジネスにおいて、先ほど挙げた3つの領域をすべて1つの企業で設計・開発することは難しく、それぞれの領域で各企業が役割を受け持ち、提携・協業を進めるエコシステムを構築しています。
以下に3つの領域で必要となる技術の概要と各企業の取り組みについて触れていきます。

車両の駆動制御 ~バイワイヤ化~

従来システムとの大きな変化点として、車両の『電動化』が挙げられます。これまでヒトが操作してきた「走る(アクセル)」「曲がる(ハンドル)」「止まる(ブレーキ)」の機能を自動で電子制御する技術で、特に『バイワイヤ化』のシステムが現在導入検討されつつあります。

バイワイヤ化は従来の機械式制御に置き換わり、電線内(電線=ワイヤ)を通る電気信号で制御するシステムのことで、もとは飛行機に搭載されているオートパイロット機能に実用化されており、この技術をクルマに応用展開し自動運転を実現するというものです。

バイワイヤ化は、アクセル、ハンドル、ブレーキ機能で独立に開発することができ、従来のシステムを設計してきた各々の供給メーカーが自動運転の実現に向けた新規のシステム開発を進めています。

機械式制御を電子制御する際に、特に『安全性能』が重要視されます。例えば、信号通信の遅延はそのまま制御の遅れに直結しますし、電子信号が正しいかどうかを判断する制御回路を組む必要があります。

そのためシステムとしては、「機能安全」と「フェールオペレーション」への対応が要求されています。自動車業界では、機能安全はそのシステムの役割、故障率とその故障による人命への影響などからASIL(Automotive Safety Integrituy Level:安全要求レベル)で定義されており、A,B,C,Dの4段階にシステムごとに付与されます。

またフェールオペレーションは、システム故障後におけるオペレーション機能のことで、例えばハンドルの故障など人命に重大な影響を与えるシステムに対しては故障後も動作し続ける’’システムの冗長化’’が要求されます。これは単純にシステムを2つ搭載することで実現できますが、コスト面から各社ソフトウェアでの対応やその他システムとの相互補完で補う検討も進められているのが現状です。

センシング制御 〜各種センサ〜

従来のクルマでも多くのセンサが搭載されており、上位の高級車ではおおよそ100個以上搭載されいると言われています。ここでは、自動運転実現のために特に重要な「カメラ画像処理」と「LIDAR」について紹介します。

  • カメラによる画像処理技術
  • 自動運転でカメラが担う役割として、人間のドライバーと同等の周辺環境の認識能力と判断能力が要求されます。あらゆる状況に対応する必要があり、開発では最新のAI(人工知能)技術であるディープラーニングや機械学習を用いる手法が一般的です。
    ここではカメラの画質、補正機能よりもどう周囲の環境を認識するかが重要となってきます。

    そこで開発の手法としては、仮想空間上を自動運転ソフトで長時間走行させる学習作業の繰り返しや、実際の公道を走行させる実証実験があります。
    公道を用いた走行実験では、実際の走行動作を確認するのと合わせて、公道での走行環境データを入手し、仮想空間上の環境構築にフィードバックすることで学習精度の向上にも役立ています。

    なお、自動運転における画像処理に関しては、弊協会の記事でも紹介しておりますのでご参照ください。

    「機械学習まであと1歩!写真から顔や物体を取り出すには? 実装編第2回」
    「OpenCVで機械学習をさせてみた!! 実装編第3回」

  • LIDAR(Laser Imaging Detection and Ranging)技術
  • LIDARはパルス状に発光するレーザーを照射して、物体にぶつかり発生した散乱光を検出し、その反射時間(発光してから反射光を検出するまでの時間)で距離を算出する技術です。
    LIDARは対象となる物体との距離を3Dデータとしても測定できるため、一般道路での周囲の正確な距離や形状を知ることができます。そのため一般道路での自動運転を実現するためにはLIDARが不可欠と位置付ける企業もあり、開発競争には多くの企業が参入しています。

クラウド通信

自動運転では、最新のデータやプログラムをネットワーク経由で取得することを前提に設計されています。そのため、誤動作なく動くためにはネットワークに常時繋がっている必要があります。具体的に通信で入手が必要な情報は以下となります。

  1. 地図・位置情報(3次元デジタル地図、渋滞情報、天気など)
  2. 自動車メーカーから提供される情報(車載OS、自動運転ソフト、セキュリティ対策ソフトなど)
  3. 車両管理センターから提供される情報(運行管理情報、運行指示スケジュール、緊急対応など)

これらの自動運転制御ではクラウド通信をはじめ、車両間での通信で大容量でかつ超高速な通信技術が必要となり、現在では5G(第5世代移動通信システム)の実用化に向けて各社が連携して開発を進めています。

自動運転車の社会実装に向けての課題

自動運転の社会実装に向けて、前述の技術開発以外にも整備が必要な領域がいくつかあります。一つは法律や制度面での整備です。

特に自動運転レベル3以上では、運転責任がドライバーになくシステム側になる場合があるため、現状の法律や保険制度では適用できない部分が出てきます。

そのため自動運転技術の市場投入には、ドライバーとシステムの責任の範囲を明確にしていく法整備、保険制度の改定を待つ必要があります。

また自動運転という新しい技術が広く活用されるためには、その技術の社会に対する価値の訴求活動や交通事故率が従来よりも下がるなどの実績を積み重ねることで、社会の理解、賛同を得る社会受容性を高めることも重要になってきます。

まとめ

いかがでしたでしょうか。
今回は自動運転の実現に必要な技術とその他の法律、保険制度などの整備の必要性について触れてきました。

自動運転の社会実装に向けては、各企業、大学、省庁、地方自治体など各方面での協力が不可欠となります。

私たち未来技術推進協会は、以前に芝浦工業大学の伊藤教授を講師としてお招きし、「未来の自動車技術×SDGs」をテーマにアイデアソンを開催するなど、イベント企画を通して、企業、大学、投資家など人と人を繋ぎ新しい技術による社会課題解決に貢献していきます。

次回は、自動運転によってもたらされる世界について紹介していきます。

以上、Vonaでした。

参考

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